この勇者候補、チェンジで!!
PKT
読まなくてもなんら問題ないプロローグ
三年と二十一日前の事。私たちの住む大陸の西に、何の脈絡も予兆もなく魔王が現れた。
魔王は異界から配下である魔族を呼び寄せ、あっという間に一大勢力を築くと同時に人間へと宣戦を布告した。
魔王の領域と隣接していた小国は尽くが蹂躙され、吞み込まれて、その歴史に終止符を打った。
その勢力の拡大は恐ろしく早く、わずか一年で大陸の三分の一が魔王の手に落ちた。
ここへきてようやく各国は事態の深刻さを認識し、大国を中心として対魔王、対魔族を掲げる同盟を結成するに至った。
しかし、それはあまりにも遅きに失していた。異界からやってくる魔族に加え、人間を喰らう事でこの地での繁殖をも始めた魔族に対し、人間は既に個体の質だけでなく数の面ですら負けつつあった。
大急ぎで建造された要塞は、飛行型の魔族によって空から蹂躙された。開発された新たな武装を投入すれば、魔族はそれらに対して有利な種族を前面に押し立てて対抗した。
それでも人間は、部隊の統制や多彩な戦術といった魔族側にはない武器で戦線を維持していたが、その拮抗もいよいよ崩れようとしていた。
人事を尽くしてなお及ばない事を悟った人間たちは、最後の望みとして天命に賭ける事にした。
それは、遥か古代に存在したと言われる"神通の儀式"を現代へと復活させ、自分たちの上位の存在とされる神へと助けを乞う事だった。
はたして、多数の宗教家と考古学者、そして魔導師によって、御伽噺としか思われていなかったその儀式は再び蘇った。
しかし、神へと願いを届ける事ができるのは、穢れ無き心で真摯な祈りを捧げる事ができる清らかな人間のみ。権力者と関わりを持ち、世俗に塗れた神官たちでは神の声を聞く事は出来なかった。
頭を抱えた彼らだったが、その悩みは長くは続かなかった。たまたま教会を訪れ、祈りを捧げていた少女が、神の声を聞いたというのだ。
すぐさま少女は神の声を聞く巫女として担ぎ上げられ、人類の行く末を託される事となった。
「神様、どうか窮地にある我らをお救いください」
『そなたの清き願い、たしかに聞き届けた。我ら神々にとっても丁度良い退屈しのぎ――ごほんげほん』
「……神様?」
『ともかく、協力的な神を通じて、そなたの世界に勇者を遣わそう。勇者とは、神の力の一端を与えられた超常の存在。必ずや、人類の力となるだろう』
これは、うっかり人間代表に選ばれてしまった巫女と、個性豊かすぎる神と勇者との
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