レーフェ編 第二十六話 誘拐

 俺が寝っ転がった状態からそのまま体勢を直そうとしたその時だった。


「大斬!!」


 ミシアの声が聞こえた。

 なんでスキルを使っている。変な冒険者に絡まれたか、魔物が現れたか、もしくは他の要因があるのか。そんなことを考える間も無く俺は二階の窓から外に飛び出していた。


「発勁!!」


 初めて使うが問題なく使えたようだ。体が軽いし力が溢れる。体の動き一つ一つが速い。

 脳の処理が追いつかない。足がもつれるし現在位置も把握できない。


 いつの間にか窓に手をかけてていつの間にか窓から腕の力と蹴り出す力を使ってはるか上空にいた。

 下を見ると鎧をきた人が数人、杖を持った人が数人、一番前に微笑んでいる中年の女性がいる。

 女性はミシアに対して何か手を動かして打撃を入れている。ミシアの後ろには俺たちを助けてくれた……なんだっけ。女の子がいる。

 襲われてるのか。

 女にはまだ気づかれてなさそうだが……やるしかない。


「星の一撃!!」


「お守りします!!」


 後ろの鎧を着た男が前に出て自ら盾になったことで防がれてしまった。

 くそ、気づかれてたか。 


「ありがとうね。失念していました。」


「いえ。私たちはラオ様の盾ですので。」


「ふふ、頼もしいわね。」


 見てわかるがこいつがリーダーか。


「こいつらは?」


「みてわかんない?アイラちゃんの敵。」


「敵ではありませんよ。それは私たちポーン教会の物です。ですので、返してください」


「なんでもいいよ」


 後ろを見ればアイラは怯えている。

 

「発勁!」


 何人いようが一人ずつ潰したらいいだけの話だ。

 今まで体感したことのない速さで近づきさっき守った鎧の男の腹に拳を入れる。

 白銀の鎧はひしゃげ男は上空まで飛びあがった。あの高さであの重さをつけているなら衝撃は計り知れない。次は


「コウシ!後ろ!!」


「すみません、遅れてしまいました……信仰の光――「自然の剣戟!!」

 

「あっぶね」


 後ろの杖を持っている女から白い光線が放たれた。それはかろうじて避けられたがそのまま進んでいき、後ろの家に着弾し爆発した。

 杖の女はミシアが攻撃したが間に合わなかったのか。


「そこです」


 殴られた。背中に痛みがあり後ろを振り向いたが誰もいない。このババァの仕業か。


「そことそこ」


 次は腹と顎が殴られた。


「甘い」


 顔と左足。なすすべなく転ばされてしまった。どこに逃げても当たるし見えない。

 手は何か動いているがみていても位置はわからない。

 

「精霊斬!!」


「無駄です」


 ミシアが奇襲してくれたが見ることもせず見えない拳で受け止められている。

 阿吽の呼吸を使えば状況は良くなるんだろうけどミシアに打ち合わせもなくそれをやるのはまずい気がする。

 それは無しだ。

 ポケットから盾をとり、握りしめる。


「発勁!!」


 痛む体を強引に動かして取り巻きに突撃する。

 

「止まりなさい」


 進路を妨げるように腹を殴られるが知ったこっちゃない。

 

「だから……!!」


 頭を強打される。


「その子を私に返せ」


 何か違和感を感じ後ろを見ると今度は見えていた。

 禍々しい色の大きな大きな腕が力強く握っている。


「死ね」


 女の宣告。

 最後に聞こえたのは

「あの人たちを助けて!!!!!!!!」


 女の子の声だった。

 突如、視界は純白に包まれる。

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