第38話 3強の魔物


ジャイアントスネークを討伐したあとに遭遇したのはオークキングとゴブリンキングが率いる群れだった。


オークキングは物理特化なのか体格が良く大きな斧を担いでおり、ゴブリンキングは魔法特化なのかオークキングの後方に佇まい杖を持ちローブを着ている。


対峙し早々襲いかかってきたオークキング、その後ろではゴブリンキングが既に魔法を発動しようと詠唱をはじめている様子だ。

魔物の上位種は知性もぐんと上がり戦術を巡らせるとも言われているが前衛と後衛に別れ、上位種に付き従う下位種のゴブリンやオークも一斉に襲い掛かる。

ゴブリンやオークは知性はそこまで高くなくただ群れになるとその数は厄介で、この戦い方を見るに上位種になると知性が高くなると言うのは本当のようだ。


しかし全は後衛職(サポーター)だと言うのにここでも先日を切ると風属性中級魔法の催眠(スリープ)を唱えた。

バタバタと魔物達はその場に倒れると深い眠りにつく。

数にして100はくだらないだろう、全の前に上位種も下位種も関係のない事だった。

オークキングもゴブリンキングも催眠(スリープ)に抗えず下位種が倒れるとその後に続き眠り沈んだ。


催眠(スリープ)が効いているうちに半分を全が魔法で消し炭にし、もう半分はアルテミスとルナが手分けして寝首をかいて回った。


忘れずに討伐証明を全て拾い上げると全は「ギルドで分けようね」と言い収納したが、アルテミスは「その収納は一杯にならないんですか?」と聞くと「容量は無制限だし中に入れると時間停止されるから便利だよね」と微笑みながら全が返した。

ルナは改めて、規格外が過ぎる......、と痛感しながらいちいち言葉にする事をバカらしく感じるのだった。


一行は更に竜の渓谷へと進むが大して休む間も無く少し進めばまた魔物と遭遇する。


3度目に出会(でくわ)したのは擬態したスライムで、どうやら擬態や幻覚で冒険者達を惑わしたところで丸ごと吸収しそれを糧に力を得ている様だ。


スライムは蒸発させようと考えた全。


「擬態に幻惑か......2人だと手こずりそうだしいい案も浮かばないからここは申し訳ないけど僕が殲滅するね」


と言うとウジャウジャと湧き出るスライムに容赦なく炎属性中級魔法の火炎渦(フレイムヴォルテックス)を使用するとたちまち炎がスライム達のまわりを渦状に立ち昇ると瞬く間にその姿は消えていった。


「全さんは底の知れない魔法使いですね......無詠唱に加えてその威力、それに洞察力。さすがです!」


アルテミスがそう言うと全は照れながらも「きちんと2人を守るのも師であり聖人の器の役割だからね、相性なども考えた上で2人には着実かつ確実に力をつけて欲しいから」


そう言うとルナも言葉にさえしなかったが、道中何だかんだと警戒した自分を恥ずかしく感じ、同時に全に対して尊敬の眼差しを送る。

ともに過ごした時間はほんの1日だと言うのに、心は必ずしも時間に比例する事なく良くも悪くも移ろうものだ。


「さぁ、竜の渓谷の崖にはもう間も無く到着しそうだよ。その前にもう一戦ありそうだね、油断は禁物だよ」


全が言うと竜の渓谷の入り口とも言える崖上にはオーガの集落がある。

やはり竜の渓谷は魔物にとっては魔素も他より強く住みやすいのだろう。


武仁は終始後方で魔物名鑑を強さ順に確認していたが、転移者を除けばこの世界には3強の魔物がいるようでそのうちの1種がオーガである。


しかしここを突破すればあとは浮遊(フロート)で崖下を降りるのみ、全は躊躇なくオーガに挑もうとまたしても先陣を切ろうとしたが、他のオーガとは違い線の細いオーガがいる事に気が付いた武仁は、感知している大きな力のうちの1つはあいつか、と考えながら「全、最終とどめをさした奴のレベルが上がるのか?」と聞くと全は「そうだと思うよ」と答えた。


「ここは俺がやる、HP1残すから良いだろ?」


と武仁が前に出るや「一網打尽」と呟き剣(バット)を構えると球を打ち抜く。

打った球がオーガに直撃すると線の細いオーガを残して全てが瀕死の状態で倒れた。


「おい全、あのオーガを拘束してくれねぇか?」


武仁がそう言うと全は「あぁ、わかった」と拘束(バインドブランチ)を発動させ細身のオーガを捉えると、その隙に瀕死のオーガ40体をまたしても全が20体、アルテミスとルナが10体ずつとどめを刺さてし事になった。


「なんだか......こんなやり方でレベリングしていて良いのだろうか......」


ルナがそうこぼすと全は「今はそれでいいんじゃないかい?もうだいぶん経験値も入ってレベルも上がったと思うし、力がつけば真正面からぶつかれるようになるよ」と話すとルナは腑に落ちないながら決定的な力の差を少しでも埋めるにはなりふり構ってもいられないか、とアルテミスの力になりたい彼女もプライドを捨ててオーガのとどめを刺してまわった。


武仁は全の魔法により拘束されているオーガの上位種、レディオーガに近寄ると「お前、話せるか?」と声をかけてみた。


「貴様......殺すなら殺せ!!」


レディオーガは武仁を睨みつけると拘束を外してしまいそうな勢いで力みながら武仁に向け怒鳴った。


しかし武仁は構う事なく「お前、俺に使役(テイム)させろ。俺は強い魔物にしか興味がない」と言うとレディオーガは「貴様......妾がどのような魔物か知っての言動か......?」と聞くと「3強の魔物だろ、ちなみに俺はお前の何倍も強いぜ? どうだ、魔物は弱肉強食だろ。俺はお前より強い、俺について来い」それを聞きながらもやはりレディオーガは武仁を睨みつけていた。

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