第34話 次の目的地
宿屋に到着した武仁はまだ眠っている全を叩き起こすと連れてきたアルテミスとルナを雑に紹介し寝起きでぼんやりする全に構う事なく話を進める。
「昼まで寝るっつーから俺1人でギルドに行ったんだがよ、土産だぜ! こいつの兄貴を助けに行く! 全も早く顔洗え!」
武仁の話は雑すぎて何がなんだかわからない全は「ちょっと待って......」と言うとベッドから立ち上がり歯を磨いて顔を洗い椅子に腰をかけると眼鏡の位置をなおしながら「で? わかるように教えて、何だって?」と仕切り直す。
それを見ていたルナはフフっと笑い再び話しはじめようとする武仁を遮るように口を開いた。
「はじめまして、私はルナ、そして彼女はアルテミス。私たちは2人ともソロのAランク冒険者なの。彼女は兄を聖ライガ協会から助け出す力を身に付けるべくさきほど武仁さんに弟子入りを志願し、武仁さんは快諾してくれたのだけど、あなたはどうかしら?」
ルナは簡単に話をまとめ全に問いかけたがアルテミスは彼女に続くようにことの詳細を語る。
すると全はやはり武仁同様アルテミスの話を全て聞き終わる前に、それでいて話の腰を折らないタイミングを見ながら「うんうん。辛かったね、僕らで良ければ手伝うよ」と言うと話しながら感極まっているアルテミスの頭を撫でた。
「武仁、まず聖ライガ教会へはまだ行かない。たしかに彼女の兄は気がかりだが僕らや彼女が動くより打ってつけの人物がいるよね? まずはお兄さんの安否確認、無事を確認したのち現在の様子と協会内部に違和感はないか......龍に念話を送ってみよう」
全が言うと武仁は頭の上に電球が浮かぶのが見えそうなくらいに閃いたような顔をすると「そうだった! 龍か!」と言うと2人に「龍ってのが教会に潜入してんだ、そいつも仲間2人を助ける為にな!」と教えると全は早速念話を使い、(龍、調子はどうかな?)と話しかける。
(全さん......こっちは変わりないです......。どうしましたか?)
龍己から応答があると全は経緯を説明し、アルテミスから聞いた兄の特徴を伝える。
(アルテミスの兄の名はアポロと言い、赤毛に赤い瞳で年齢は25。火属性魔法を操る魔法剣士のようだ。この特徴と重なる人物が教会内にいないかそれとなく探ってほしい。......それから別件で教会内に違和感はないかい? 例えば......協会員が操られているような......又は洗脳か、そう言った類......それを念頭に置いて教会内の様子を見てほしい)
それを聞き龍己が了承すると全は(ありがとう、気をつけて)と言い念話を終わらせた。
「とりあえずは龍からの連絡を待とう。数日中に何かしら念話で伝えてくれると思うから......待っている間に、そうだな......うん! アルテミス、ルナ、君たちが良ければフォルダンの
そう話すと武仁は「いいね!」と答えたがアルテミスとルナは首を傾げる様子だったため、
2人に恩恵を付与し終えると腹ごしらえをしたいと言う全は食堂へ向かい、4人でテーブルを囲み食事をしながら話を進める。
「そう言えば武仁、魔物を使役(テイム)しないの? ずっと思っててさぁ! 魔物使い(テイマー)だよ、魔物使い(テイマー)! 考えていたんだけど、やっぱり移動手段があった方が便利だと思うんだ! で、陸路なら馬だろうけど......空飛びたいと思わない? ......竜の渓谷......竜って名がついているんだ、竜がいると思わない? いや消して竜が見てみたいとか、ライトノベルの様に竜は話ができるのかなとか、そんな好奇心で言っているわけじゃないんだよ。......そう! アルテミスとルナもレベリングはしないとならないでしょ、何せ弟子入りしてくれた訳だし! 師なら強く鍛えてあげないといけないよね!?」
目を輝かせる全に圧倒されながら武仁は「.......お、おぅ」と答えると「本当!? じゃあ決まりだね、一応竜の渓谷方面のクエストがないかギルドで確認してから行こう」と全は胸を弾ませた。
しかしルナは竜の渓谷と聞いて表情を曇らせる。
「竜の渓谷、確かにそこには竜が棲まうとされています......しかし竜は誇り高く気高い、数千年と生きる種もいると聞きます......そんな種を打ち負かす力はいくら聖人の器とは言え......まして使役(テイム)だなんて......それに私とアルテミスが行って果たしてレベリングなんてできるでしょうか?」
ルナは冷静でいて賢い、至極現実的な話をするとアルテミスも「そうだよね、想像できないな......」と呟く。
しかしそんなルナの話を聞き武仁は逆にやる気に満ち溢れた顔をしながら言う。
「そんなに強そうな魔物がいたのかよ! 大体ワンパンで終わっちまうし肩透かしだったんだぜ!? よっしゃ! 決まりだな! 次の目的地は竜の渓谷だ」
それを聞き全も嬉しそうに「善は急げだ! 全だけに!」と言うと「うわぁ......いよいよだな......」とオヤジギャグにドン引きしながら武仁は料理を平らげた。
「アルテミスにルナ、大丈夫。命は保障できるよ、僕は転移(ワープ)が使えるから万が一危ないと思えば逃げられるし......僕はまだしも武仁が打ち負けるとは思えないけどね」
そう言うと全も料理を食べ終わり水を飲み干した。
ルナも転移(ワープ)が使用できると知り「それなら万が一はないわね」と少し安心した様子で、アルテミスも「足を引っ張らないように気をつけます!」と意気込んだ。
アルテミスとルナが食べ終わると武仁は店員を呼び会計を済ませ4人はギルドへ向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます