第25話 種族


ーー翌朝ーー


最後のログインボーナスを受け取った全と武仁は、クリスティナとケインと合流すると冒険者ギルドへ向かう。

ギルドには永遠の安寧のメンバーが既に揃っていたが、全達の姿を確認すると1人がスッと距離を取る。


「シーテンとコウヨウから話は伺いました。私はミカエル、そして彼女はナユタ。彼女は警戒心が強く......すみません、慣れるまで時間がかかりますがよろしくお願いします」


全と武仁は気にしないように言うと男性が話を続けた。


「はじめまして、私はリューズ。永遠の安寧エターナルピースのリーダーをしています。冒険者はクエストでいつでも危険と隣り合わせです。その危険を知っても冒険者としてあるのは少しでもみんなが安心して暮らせるように、そしてそれぞれの大切なものを守るためでもあります。厄災で最前線に立つ事も、繋ぐ者リンカーでなくとも私たちは買って出るでしょう。そもそも聖人の器に見込んでもらえる事自体名誉な事、謹んでお受けします」


それを聞き全は、流石はSランクパーティのリーダーだ、と感心しながら武仁とともに永遠の安寧エターナルピースの5人に恩恵スキルを使用した。

5人はやはり上昇したステータスを肌で感じるのだろう、各々に反応を見せた。

クリスティナ終始見守っていたが「ではカルカーンに戻ろう、騎士団の団長と副団長が同時に不在と言うのは領主として落ち着かなくてな......」と言うと全に転移(ワープ)を頼んだ。


「それはそうですね、わかりました。僕らはもう少し王都を見て回りその後フォルダンに立ち寄り厄災の種を浄化してからカルカーンに戻りますね」


全はそう話し頷くクリスティナとケインを転移(ワープ)でカルカーンに送った。


それから全はシーテンに魔法は何が使えるのか、など色々と質問をされその勢いに押されつつも「見せたほうが早いかな」とステータスウィンドウを開きながら会話を弾ませ、武仁は「怖くねぇぞ」と構えるナユタに取り入ろうとしたがそれに気付き焦りながらミカエルが「武仁さん、ナユタには時間が必要で......」と静止され、コウヨウとリューズはその様子を見ながら微笑んだ。


「なんだろう、前から感じていたんだけど出会う人出会う人すぐに打ち解けられる。この世界の人は人懐っこいと言うか、警戒を知らないと言うか、ナユタさんは少し極端だけど......」


全がシーテンとの会話の中でふと漏らした。


「ナユタはエルフと言う種族で、エルフは元々があまり外交的な性質ではないんです。人族は主に外交的な性質ですし、この国は治安も良いので魔物以外を必要以上に警戒したりはしないですよ」


シーテンが話すと「なるほど......って! ナユタってエルフなんだ!」とエルフと言うワードに食いつく全だが、目線をナユタに向けると武仁とジリジリと一定の距離を置きながらその間をミカエルがオロオロとしている様子を見て、今はソッとしておこう、と理性を保つのだった。


それからは永遠の安寧エターナルピースに王都を案内してもらいながら、道ゆく人々にドワーフや獣人がいる事に全は興奮しながらも、種族間でも平等なんだな、と改めて再認識し、余計に神々の思い描いた平和な世界に共感すると同時に、傲慢でも争いの火種を無くしたいと言う思いが少し増した。


昼食も夜食も永遠の安寧エターナルピースとともにし、それでもナユタは相変わらずであったが武仁は最後までしつこく声をかけ宿屋前で別れ際に「そんなんじゃ友達できねぇぞ」と言うと「......うるさい」とはじめてナユタが声を出す。

これに一同は驚いたが武仁は「そう、それでいいんだよ」と言いながら笑うと「じゃあな、おやすみ」と言い宿屋に入った。


「凄いな......エルフがこんなに早く打ち解けはじめるなんて......私たちでも一月くらいナユタの声を聞くまでにかかったんですよ」


とリューズが言うと全は「武仁って不器用で考えなしのように見えるし突っ走るところもあるけど、多分底なしに優しいんですよ」と話し、「今日はありがとうございました、明日にはフォルダンへ向かいます。その前にギルドに寄りますね、ではおやすみなさい」と挨拶をし永遠の安寧エターナルピースと別れた。


「あれが聖人の器かぁ......と言うより全さんと武仁さんかぁ......厄災は不安だが、彼らと出会えた......良い時代に生まれたなぁ」


リューズが言うとコウヨウは「全は普通だが武仁は面白ぇな」と言い、それを聞いたシーテンは「全さんは普通じゃないよ! とても凄いよ!」とムキになってミカエルがそれを笑うとミカエルの後ろでひっそりとナユタもクスっと笑うのだった。

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