第5話 冒険者ギルド
青年に連れられて、冒険者ギルド、と書かれた看板が掲げられている建物に到着した。
「ここは冒険者ギルド、各地から腕に自信のある奴らが、クエストを求めて集う場所だよ。さっきの話、もう少し詳しく聞かせて欲しいんだ。俺は騎士団に報告をしに行かなければならない。一旦席を外すが、俺が戻るまで悪いがここで待機しておいてくれ」
騎士団に冒険者ギルド、全はこの異世界ワードにワクワクが止まらないのだろう。
目を輝かせながら青年に問いかけた。
「騎士団に所属されているんですか?!」
青年は全の勢いに押されながらも答えた。
「あ、あぁ。自己紹介がまだだったね。俺はカルカーン騎士団の副団長、ケインだ。よろしく頼む」
そう名乗ったケインは、冒険者ギルドの受付で一通りの説明をした後、騎士団への報告に行くとその場を離れた。
2人は受付係にしばらく待つように促され、冒険者ギルドの中の一番奥のテーブルに着く。
「おい、おっさん。クエスト? だとかギルド? だとか騎士団? ちょっとわかんねぇ事ばっかりなんだが」
武仁は席に着くや全に問いかける。
「そうか、武仁はこう言う世界観を全く知らないんだもんなあ! いいぞ、教えてやろう! 簡単に言うと、多分こうだ。この城下町カルカーン、高台の方に城が見えただろう? その城にお偉いさん......"この辺りの土地を納める"領主だとかが住んでいるんだと思う。で、そのお偉いさんに支えて城下町を守ったりする、現代で言う"警察や軍隊みたいな組織"を騎士団って言ったらいいかな。そして、冒険者と言うのは、さっき街道に出た魔物なんかを討伐したり、薬草を採取したり、時には探し物を探したり、とにかく色々な依頼を困った誰かがギルドへ出す。その"依頼を受ける人"が冒険者で、冒険者ギルドは"依頼者と冒険者を繋ぐ窓口"のような役割を担っているんだ。この"依頼の事"をクエストと言って、冒険者はクエストを成功させると、依頼者からギルドを経由して報酬が貰える。異世界モノは設定によって多少の齟齬もあるだろうが、こんな感じだろうか......理解したかい?!」
興奮しているのか、いつにも増して流暢に話す全だが、武仁には情報過多だったようだ。
「お......おう。まあ、その辺はおっさんに任せときゃ大丈夫そうだな......」
武仁にそう言われると、頼られたと感じた全は張り切って返事をした。
間も無くして受付から呼ばれ、冒険者ギルドのギルドマスターが直々に話を聞く、と言う事で上階へ通された。
受付の女性が「お連れしました」と扉越しに発すると、扉の向こうから「入ってくれ」と返事がある。
扉を開き部屋へ入ると、歴戦の古傷が強者を物語っているような、なんとも迫力のあるギルドマスターが応接用の卓に着いていた。
「待たせて悪かったな! 早速だが座ってくれ、詳しく話が聞きたい!」
促されるまま卓に着く2人、ギルドマスターはワンドと名乗った。
ギルドマスターともなれば堅苦しいのかと思いきや、どちらかと言えば野生的な身なりで、驚いたのは女性であると言う事だ。
「ケインから話は聞いたが、Bランクの魔物がここらに出ただけでも驚いたが! まさか! それを狩るやつがいるってんだから、これは会って直接話をしたいと言うもんだ!」
そう言われ、全は討伐証明のガラス玉のようなものを卓の上へ置いた。
「僕は全、彼は武仁と言います。2人で田舎から出てきましたが、ここへ来る途中に例の魔物と交戦しました。武仁が感知系のスキルを所持していたので、魔物より先手を打つことができました。慌てて火属性魔法で撃退しましたが、これ以外は灰になってしまい......。その時に身分証を紛失したんだと思います」
場慣れしていると言うのか、それとも知力が高いからなのか、門兵に話をした時といい、スムーズに受け答えする全に対し武仁は、これが大人か、と少し見直した様子だ。
しかし、ワンドは腑に落ちない様子で深掘りする。
「感知スキルは理解できる、それにより先手を打ち、火属性魔法を放てたのも理解できる! が、こいつはホークアイと言ってBランクの魔物だ! 火属性魔法で消し炭にするほどの威力となると......流石に上級魔法でなければ辻褄が合わないぞ!」
これを聞いた全は門兵の時に感じた違和感を思い出す。
そうか、僕らが授かった力がチート過ぎて、この世界で当たり前とされるパワーバランスを前提にすると齟齬が生まれるのか......。
そう解釈した全はワンドの疑念に答えた。
「はい、僕は火属性上級魔法を修得しています。上級を修得するのは僕らの村では凄い事で、更に高みを目指そうと、感知スキルを使える
「なるほど、そう言う事なら合点がいく! ともなれば全と武仁、と言ったかな! 2人は控えめに言っても、Bランク冒険者に匹敵する実力だ! その村だけではない......上級魔法を扱える魔法使いは一握り! 身分証の件は、このギルドで冒険者登録をすれば問題ないだろう! 強き者は大歓迎だ!」
そう言うと、ワンドは先程の受付係を呼び、2人の冒険者登録と討伐証明の買取手続きをするように、と言い付け、書類整理が片付いたら飯でも食おう、別れ際に言った。
2人は受付係の後について再び階下へ降りた。
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