イチゴ姫のパーティー会場

トマトも柄

第1話 イチゴ姫のパーティー会場

 今日はイチゴ王国でのパーティーがあります。

 みんなは下準備を終えており、後は来場する人を待つだけです。

「今日はパーティーの日です! 色々な王国から来場してきますので皆さんは粗相のないような振る舞いでお願いします!」

 イチゴ姫は兵士達に説明をしています。

「兵士達はなるべく複数での行動を心がけてお互いの助け合いをお願いします! そして今最後尾にいる王様!」

 イチゴ姫の言葉に兵士達が最後尾の王様を見ます。

 王様はコック帽を被っており、完全に料理人達に溶け込んでいる状態でいます。

「イチゴを使った料理を作るのは良いのですが、か・な・ら・ず助け合いを心がけて下さい! 単独行動は絶対にしないで下さい!」

 それを言われて王様は横眼で逸らし、

「もし守らない場合は護衛を更に追加して動けなくします」

「ひゃいいいい!」

 イチゴ姫の一言で王様の情けない声が鳴り響きました。

 こうして王様手作りのイチゴスイーツなどが並べられながら来場者を待つのみです。


 しばらくの時間が経ち、様々な国の方達が入ってきます。

 イチゴ姫はその方達に挨拶を交わしていきます。

 一番最初に現れたのはブレッド王女でした。

「素敵な会場にお呼びいただきありがとうございます。 私達の作ってる食品でパーティをもてなしてくれると聞きまして」

「ブレッド王女。 お忙しい中お越しいただきありがとうございます。 みなさんの作っている食品を使ってパーティをやってみたかったのですよ」

「それはとても楽しみですね。 どんな料理かは決まっているのですか?」

「それはお楽しみということで」

 イチゴ姫がにこっと笑顔で返す。

 するとブレッド王女の後ろで隠れながらひょこっと顔を出している女の子がいます。

「あらあら。 そこに隠れていたら挨拶が上手くできないですよ。 クリーム姫」

 後ろで隠れていたクリーム姫と呼ばれた女の子が隠れるのをやめて前に出てきます。

「あ、あの! お、お呼び頂き! ありがとうございます!」

 緊張している状態でクリーム姫は一生懸命挨拶しております。

「そんな緊張しなくて良いのよ。 肩の力抜いてお友達と話す感じで大丈夫だからね。 きてくれてありがとう」

 イチゴ姫がそう言うとクリーム姫が顔を真っ赤にしてひゃい!っと直立して返事を返します。

「あらあら。 クリーム姫ったらそんな緊張しちゃって〜。 イチゴ姫が憧れの存在だからってそこまで緊張しなくても良いのに〜」

 ブレッド王女はクスクス笑いながらクリーム姫を見ます。

「だって……憧れの人とお話できるんだもん。 こんな事滅多に無いもん」

「そんなに緊張しなくても良いのよ。 お話したい時はいつでも呼んで良いのよ」

 イチゴ姫はクリーム姫の緊張をほぐすように笑顔で話します。

「ひゃい! 分かりました!」

 イチゴ姫とブレッド王女は緊張しているクリーム姫を微笑ましく見ています。

「それでイチゴ姫に聞きたい事があるんです!」

 クリーム姫はイチゴ姫に何か聞きたがっている様子です。

「何が聞きたいのかな?」

 イチゴ姫は笑顔でクリーム姫に聞きます。

「どうすればイチゴ姫みたいになれますか!?」

 クリーム姫の疑問に二人は頭を傾げます。

「だってイチゴ姫はいつも企画を立てて率先しているじゃないですか! 私もイチゴ姫に憧れてやってみたい!」

 イチゴ姫はクリーム姫の頭を撫でて、

「そう思ってくれているなんてとても嬉しいわ。 けれど、クリーム姫にもちゃんとクリーム姫の魅力があるのよ」

「魅力?」

 そこでブレッド王女が横入りするように会話に入ります。

「そうよ。 あなたにもちゃんと魅力があるから付いてきてくれてる人達がいるじゃない。 その人達はあなたに魅力があるから付いてきてくれてるのよ」

 その会話の途中で三人に食事が運ばれてきました。

 それはパンの間にクリームが挟まれており、その中にはイチゴが入っておりました。

 フルーツサンドです。

 三人はフルーツサンドを頬張り、美味しそうな顔をしています。

 イチゴ姫はそこでクリーム姫に話しかけます。

「クリーム姫、おいしい?」

 クリーム姫はうんと頷いています。

「これもそれぞれの魅力を出しながら組み合わさっているのよ。 パンでクリームとイチゴを包み込み、クリームの甘さを引き立てながらイチゴの存在感を出す。 これはそれぞれが無いとできない組み合わせなのよ」

「つまりそれぞれの魅力をみんな引き立てているって事?」

 クリーム姫がそう聞くと二人は頷きます。

「私のパンの魅力があってこそ! このフルーツサンドができたのよ! オーホッホッホ!」

 ブレッド王女の笑いに釣られてイチゴ姫がクスクス笑いながら、

「ここまで強調はしなくても良いけれど、ちゃんとクリーム姫にはクリーム姫の魅力があるんだよ。 魅力があるからこそ私も呼んだのよ」

 クリーム姫は目に涙を浮かべています。

「ありがとうございます! やっぱりイチゴ姫は尊敬できる人です!」

 そこで涙を拭い、

「イチゴ姫は尊敬できる人です! けど、自分の魅力を失うところでした! 尊敬できる人には変わりません! けれど、私は私のやり方でやって見せます! 今後も見て下さいね!」

 二人はその言葉を聞き、笑顔になっています。

「これは今後の活躍が期待できそうね。 ねえ、イチゴ姫」

「きっといいやり方で進めるはずよ。 頑張ってね」

「はい!」

 それぞれやり方が違う三人。

 けれど、それぞれが魅力を引き立ち、こうやって協力し合う。

 まさにこのフルーツサンドのように。



 









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