【完結】お前の秘密を知っている!無意識に暴いて気づけば……
猫カレーฅ^•ω•^ฅ
第1話:今永麻衣の秘密
「なんで……私だって分かったの?」
放課後の教室で俺と彼女の二人だけになった時に言われた。ちょっと何を言っているのか分からない。
彼女の名前は
クラスの中でも人気者で色んなヤツから告白されたという噂もよく聞く。リア充ポジションなので、割と上からの感じで次々振っているのだとか。
対して俺はクラスの陰キャポジションの
そんな俺が、なぜこのクラスの人気者に放課後まで残れと言われて、訳が分からないことを問い詰められているのか。ちょっと困惑気味だった。
◇
元を辿れば、それは今日の昼休みのことだった。
俺はいつものように1人でパンを食べていた。ぼっちに近い俺は自分の席でスマホを片手に普段から見ているサイト周りをしていた。
来季のアニメは豊作だ。ずっと好きだったラノベがアニメ化される。自分があの作品に出会ったのはもう2年も前。今やっと時代の方が付いてきた気がして誇らしい気持ちになっていた。
日々よく見るサイトは決まっているので、ブラウザはタグをいっぱい作って次々開いて見ていくスタイルだ。
そんな中、エロ画像のサイトもそこに含まれていた。ついうっかり学校でエロ画像のページを開いてしまった。
エロ画像と言っても、いわゆる裏垢サイトでコスプレや水着姿くらいで下着はチラ程度。個人のサイトらしくて運営もモデルも「裏垢女子まいまい」。ただ、雑誌のグラビアと違って臨場感がすごい。背景が普通のJKの部屋だからかもしれない。ぐっとくるのだ。
そんなことを考えていたその時だ。
(ドンッ)今永 麻衣が後ろから座っている俺にぶつかってきた。
そのショックで俺はスマホを自分の机の上に落とした。
「あっ! ごめん!」
今永 麻衣が友達とはしゃいでいてぶつかってしまったらしい。スマホは落としたけど、机の上だ。問題ないだろう。
「あ、いいよ」
「スマホ、大丈夫だった?」
覗き込んでくる今永 麻衣。心配してくれるなんて意外といいヤツかもしれない。
「あ、うん。多分」
エロ画像を見ていたので俺としては少しばつが悪い。慌てて画面を隠した。
「え? あ! それ!」
しまった。クラスメイトの、しかも女子に裏垢を見ているのを見つかってしまった。俺は即座にスマホをポケットにしまったけど、後の祭りだろう。
彼女は確実に反応していたのだから。「あっ」て言ったし! 「あっ」って!
少し引きつったような顔をしていたのが印象的だった。
俺は彼女の中で株が下がっただろうなぁ。まあ、クラスのリア充とどうにかなろうなんて夢にも思っていないのでダメージは少ない……ことにしたい。
彼女がクラスメイトに噂を流さないでいてくれれば嬉しいのだけど……。わざわざ口止めするのもカッコ悪いし俺から言うのはなぁ。何かあったら受け入れるしかないと覚悟した。
そして、昼休みが終わる間際、俺の席の横を今永 麻衣が通り過ぎた。通り過ぎることくらい普段からいくらでもあるのだけど、今日は俺の机の上に折りたたまれた紙をポンと置いて行った。
今永 麻衣は無言だったけど、確実に俺と目が合った。その紙を見ろって事だろう。
紙はノートの1ページみたいで四つ折りになっていた。そーっと開くと「放課後教室に残ってて」と書かれていた。ノートは雑に破られた跡があり、ラブレターにしては色気がない。
呼び出しだと直感した。昼休みとはいえ、教室で裏垢を見ていたのだ。「気持ち悪い」とか断罪されるのかもしれない。
でも、「裏垢女子まいまい」は、そんなにゴリゴリのエロサイトではなく、コスプレの服のセンスもいいし、スタイルもいい、顔こそ写されていないけど俺が勝手に可愛い
◇
そして今、放課後。教室に俺と今永 麻衣だけになった時、彼女が俺の席まで歩いてきて言った。
「なんで……私だって分かったの?」
あれ? 思ったのと違うセリフが彼女から聞こえてきた。俺の予想では「教室で何見てんの!? 気持ち悪い」とか「むっつりスケベ」とか、悪い場合は「黙っててほしかったらお金を準備しなさいよね」とかだった。
彼女が何を言っているのか分からなかったので反応できない俺。
「見たんでしょ? あのサイト」
やっぱり昼休みに見られていたか。俺は無言でスマホを取り出し、例のサイト「裏垢女子まいまい」を表示させてコトリと机の上に置いた。
「……」
椅子に座っている俺から見たら彼女に見下げられている状態。とても顔を上げてまで彼女の顔は見れなかった。
今度は、今永 麻衣がポケットから彼女のスマホを取り出し、俺の机の上に置いた。
その画面には、俺が昼間見ていた例の「裏垢女子まいまい」が表示されていた。
「……」
ん? どういう事!?
「いつからなの?」
今永麻衣が訊いた。俺がこのサイトを発見した時期だろうか。見始めてもう半年にはなるだろう。
この半年でカメラアングルもバリエーションが増えたし、ポーズも衣装も増えた。俺はその成長を見続けてきたのだ。
「半年くらい……」
「え!? そんな前から!?」
ずっと見ていたのは間違いない。正直に言って断罪されよう。
「ずっと見てた。これからも見続けたい」
「……」
恐る恐る彼女の顔を見上げると、嬉しさが溢れんばかりの顔をしている。
あれ? また思ったのと違う反応。
ここで俺は気づいた。彼女もこの「裏垢女子まいまい」のファンなのだ! なるほど、だからわざわざサイトを表示させて見せてきたのか! それで辻褄が合う!
「俺達は秘密を共有したってこと?」
「秘密にしてくれるの?」
そりゃあ、たしかに可愛いサイトではあるんだけど、クラスのリア充女子、今永 麻衣が「裏垢女子まいまい」を見てたらあんまり誇れないよな。
「俺達は同士だろ?」
「ありがとう……」
「でも、なんで?」
好きな理由か。なんでも何もないだろう。
「服のセンスもいいし、着こなしもいい! 最近、カメラアングルも凝ってきたし、ポーズも増えてきた。まいまいの進化をもっと見たい! 単純にまいまいが好きなんだ!」
しまった。オタクらしく語ってしまった。
今永麻衣が顔を真っ赤にしている。怒った? いや、俺が余りにも厨二発言をしたから、あっちの方が恥ずかしくなったのか。すまん。
「気づいたのに、止めてくれないの?」
「好きなんだ。これからもずっと見ていたい。当然だろ?」
「でも……。てっきり、もっと他の画像を見せろとか、目の前で脱げとか言われると思ってた……」
画像は結構な量 スマホに保存してる。他があるなら欲しい! 目の前で脱げ、は今永麻衣が裏垢女子まいまいを見ていたと言う事を餌に脅迫して……と言う事か。それくらいで今永麻衣に脱げとか言っても脅しにもならない。
「画像は俺が持ってないのがあるんだったら、ぜひ欲しい!」
「ぶっ、あはははは。ホントに好きなのね!」
「当たり前だ。こっちはずっと見てきたんだ」
「好きなの?」
「あぁ、かなり」
ここで今永麻衣が真っ赤になって、もじもじし始めた。
「やめろって言わないんだね」
別に誰に迷惑をかけている訳じゃない。好きなものは好きでいいと思う。しかも、俺ごときがクラスの人気者、今永麻衣に意見する訳がない。
そりゃぁ、女子から見たら単なるエロ画像に思えるかもしれないけど、それだけじゃないって彼女になら分かるはず!
「今永さんも単なるエロ画像じゃないって思ってるんだろ!」
「……うん、分かってくれるんだ。嬉しい」
俺も推しの事を好きな人と出会えて嬉しいよ。
「でも、最近 特定班みたいな人も増えたし、勘違いの人からの脅迫みたいなのとかも増えてきて……見てもらいたい気持ちもあるけど、どこかもうやめないとって思ってて……」
「そうなのか?」
サイトを見てるだけで? 人気者は大変だな。
「承認欲求のために始めたんだけど、身バレは怖いし、ホントは誰かに止めてほしかったのかもしれない……」
ん? 身バレ?
今永麻衣が俺の方を力強く見た。
「野坂くんって彼女いなかったよね?」
何? 急にリア充がマウント取ってきた!? 彼女いないんでしょう? 私にはたくさん彼氏がいるけど? ……みたいな?
「い、いないけど?」
「よし! 分かった! 裏垢やめる!」
「ん?」
「これからは野坂くんのためだけに撮影する!」
「は!?」
これからは? 俺のためだけに? 撮影?
「とりあえず、無圧縮の高画質画像と、思ったより下着が映っちゃってボツにした画像が大量にあるんだけどいる?」
今永麻衣が顔を近づけてきた。
「え? え? 画像? いる……」
どういうことか まだ頭が付いていってないんだけど……
「これからは、野坂くんだけの『まいまい』だから。よろしくね♪」
今永麻衣が、裏垢女子まいまいの決めポーズをした。俺ほどのファンになったらそれを見れば分かる! 骨格が同じ、手足の長さが同じ、スタイルが同じ。顔は見たことないけど、間違いない!
今永麻衣が「裏垢女子まいまい」だ!
え? さっき、裏垢やめるって! 俺だけにって! つまり、今永麻衣が「裏垢女子まいまい」で、「裏垢女子まいまい」は今永麻衣!
「これからよろしくね♪ 野坂くん」
「なんだってーーーーーー!?」
放課後の教室に俺の声が響き渡った。
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