第4話 決戦の地は首都
「今朝5時頃、中野駅近くの中央線のガード下で泥酔したサラリーマン5人が通りがかった警察官に発見され、病院に緊急搬送されました。全員財布等所持しておらず一連の昏睡強盗と手口が同じことから警察が関連を調べています」とアナウンサーが言うのを聞いた求美が華菜の耳元で「華菜、これってあいつの仕業だと思わない?」と聞くと「うん、きっとそうだよ」と答えた。「やっぱり東京にいたか」と求美、「知ってたんじゃないの?」と聞く華菜に「一応、拘束されてたんだから飛蝶がどこにいるか知ってる訳ないじゃん、丸顔神には勘で言っただけ。でもあいつの性格から考えて田舎は考えられない。絶対、首都の東京にいるって思ったの」と答える求美を「神様に対して勘で言い放つとはさすが私の本体」と感心する華菜だった。正面に顔を向けた求美が「早津馬さん、東京のどこに住んでるんですか?」と聞くと早津馬が「阿佐ヶ谷、杉並区のって言っても分からないよね」と答えた。阿佐ヶ谷を知らない求美が更に「そこって中野に近いですか?」と聞くと早津馬が「まあ近いかな、JRで二駅だから」と答えるのを聞いた求美と華菜が顔を見合わせた後、笑顔で「阿佐ヶ谷までお願いします」とまた二人でハモった。このままずっと一緒にいられたらと思うほどの好感をもってしまった早津馬が断る訳がなく笑顔でうなずいた。「帰り道だし、二人が一緒だと楽しいし…」と言う早津馬の言葉が終わるのを待って求美と華菜がまた声を合わせて「ありがとうございます」とハモった。食事が済み食堂を出ると求美が早津馬に「ほんと申し訳ないんですけど私も後ろでいいですか?華菜と話がしたいので」と言ってきた。求美がセカンドシートに行ってしまうのは残念だったが「駄目」と言える訳もなく笑顔で了解した。走り出してしばらくしてルームミラーで求美と華菜を見ると確かに二人で何か話をしていた。その時、求美がこちらを見たのでルームミラーの中で目と目が合った。真顔から笑顔になった求美が早津馬に「家に帰ったらどうするんですか?」と聞くので早津馬が「明日は出番…と言っても分からないか、仕事に出るってことだけど、だからアパートに着いたら後はのんびりするだけかな」と答えると求美は「そうですか」とだけ言い、また華菜と話始めた。「節約のため、一般道でゆっくり帰ろう」と考えていた早津馬だが、けち臭いと思われそうだし、食堂での支払いで残金が思いのほか十分あることが分かったので、高速で帰ることにした。矢板から高速にのった。格段にスピードが上がったので、今までの経緯から華菜が騒ぎ出すかと思ったがやたら静かなので、ルームミラーでセカンドシートを見ると、求美と華菜は二人共寝ていた。夜通し丸顔神と話をしていたため、眠気に勝てなかったようだ。それを知らない早津馬は「助手席で寝ないように配慮したってことか、気づかいできる娘だなあ」と感心していた。そんなことを考えながらふと、またルームミラーを見ると今度は肝のすわった早津馬でさえ、あわや交通事故をおこしかねないとんでもないものがミラーに写っていた。
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