[6] 禁
変なものに遭遇するのはガキの頃が多い。
単純にガキはバカで警戒心が薄いのと、認識がぐちゃぐちゃで条理から外れたものを受けとりやすいのと、それから過去のことで記憶が曖昧になってるのとだいたいそんなところだろう。
俺もあった。
田舎の家に遊びに行った時、あんまりにも暇だったのでサッカーボール抱えて外に出ようとしたら、じいさんがいきなり変な忠告してきた。
「しめ縄こえて裏山に入ってはいかんぞ」
なんだそれはと思いながらも適当にはいはい言って出かけたんだと思う。家を出て裏手にまわると空き地があってそのずっと奥に確かになぜかしめ縄があった。
ひとりでリフティングとかして遊んでたんだけどまあ当たり前のことにそんなことしてても退屈極まりなくて、でも戻ったところでなあと考えながらだらだらしてた。
そうした時にどこかから声が聞こえてきて、それは細くて弱弱しくてかすれていた、ような気がする。
「遊ぼうよ」
振り返ればしめ縄の向こう側に白服を着た少女が立っていた。今思えばあの白は妙なぐらいにはっきりとした白だった。生物的でない白さ、例えばデジタルでしか再現できないようなそんな白さ。
まあ俺はそいつのこと知らなかったし、じいさんに言われてたしで無視して帰ることにした。
その後もそいつはなんやかんや言ってた気がするが記憶に残ってない。無事に家まで帰りついたら玄関でじいさんが待ってて怖い顔をしていた。
「お前まさか裏山に入ったのか!」
「いや入ってないけど」
「入ってないのか!」
話はこれで終わりだ。
じいさんはもう死んでるし詳しいことは結局聞きそびれてしまって、今となってはこれ以上のことは何もわからない。
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