趣味

新しい趣味に打ち込みたくてミラーレス一眼カメラを買った。

写真は仕事上、よく撮影していたが趣味として写真を撮った経験はなく、プライベートで撮ったことがあるといえば彼女の裸くらいだった。


写真投稿用にSNSのアカウントを開設し、気になる建物や風景などをアップした。

その内、承認欲求を満たすためにモデルを撮影したポートレートを撮影してアップするようになった。

モデルはSNSのDMから撮影の依頼をして有料の個撮をした。

カメラマンとモデルとの関係性は守り、基本的にはモデルに恋愛感情を抱くことはなかった。

趣味として納得のいく写真を撮りたい。

それだけだった。


ある時、SNSでファッション系の写真をアップしているモデルを見つけた。

服の着こなしが上手く、ランジェリー写真もアップしていた彼女に興味をもった。

彼女にDMを送り、日程を相談し撮影コンセプトについてやり取りをした。

なんどかやり取りをする中で、お互いにカラオケが好きで聞いている曲も同じような趣味だったので、撮影後にカラオケに行く約束もした。


撮影はマンションの部屋をそのままスタジオに改装したレンタルルームで行った。

部屋着でリラックスした写真を撮る予定で、彼女が用意した部屋着は黒いキャミソールだった。

黒いキャミソールに腰までの長い髪が、僕の性欲を掻き立てたがイメージ通りの写真を撮ることに集中した。

撮影の合間に彼女は「私、結婚してるんだけど。ぽくないって言われる」と僕に言った。

その時は結婚してるから手は出さないでねって意味だと思っていた。


撮影は滞りなく終わり、その後は2時間カラオケで一緒に歌って楽しんだ。

会計を終え、トイレに行った彼女をカラオケの外で空を見上げながら待った。


頭上に浮かぶ青白い月。

その下を飛行機が通過していく。

月明りに照らされた飛行機雲で真っ白な白い直線が描かれた。

それを見ながらまた彼女に会えたらと思った。


彼女を駅まで送りながら、また一か月後の撮影を約束した。

写真をレタッチしてデータを彼女に送り、それぞれSNSにアップした。

一ヶ月後の撮影までの間、ほとんど毎日LINEのやり取りをしていた。


当然ながらSNS上の名前は本名ではなく、次の撮影の時に本名を教えてあげると彼女は僕に伝えた。


2度目の撮影も同じレンタルルームを借りた。

出入りは自由だったので今度は外に撮影へ出かけ、2時間ほどの撮影を終えてから再びレンタルルームへと戻った。


撮影した写真をカメラの液晶画面で一緒に確認していると「私の名前教えるって言ったね。なんだと思う?」と聞かれたが、到底当てられるはずもなかった。

名前を中々当てられないやり取りを楽しんだ後で、本当の名前を教えてくれた。


僕が彼女の名前を一度口に出し、頭の中で反復していると、どうして名前を教えようと思ったのか聞いて欲しい話があると彼女は言った。

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