幸福
夜のミルクやおむつの交換は一日交替にした。
ミルトンの消毒液に3本の哺乳瓶を付け置きしておく。
赤ちゃんがミルクを飲んでいる姿がとてもかわいく純粋だ。
ただ生きるために一生懸命にミルクを飲んでいる。
おむつ交換はおんなの子の場合は特に気を使った。
おしっことウンチで拭き方が違うので、男の子の時と違って慎重に拭かないといけなかった。
寝かしつけしても中々寝ないときは、抱っこして外を歩いた。
春の夜は心地よく、愛する娘を抱っこして月を見ながら歩く時間はそれだけで幸せだった。
1年が経過して、妻のお腹にはもうひとつの命を授かった。
ふたりめは切迫早産と診断されたため、産婦人科でしばらく入院した後で市内の病院へ移ることになった。
小さな娘を連れて産婦人科と病院へほとんど毎日、妻の様子を見に行った。
妻の連れ子は、妻の実家で預かってくれていた。
11月も半ばになった頃、仕事で隣市へ出ているときに分娩室に入ったと連絡があり、19時頃だったため実家で夕食を軽く済ませて病院へ向かった。
産婦人科と違い、病院では立ち合いができず出産を終えて疲弊した妻を出迎えた。
2人目も女の子だった。
とても小さく産まれた娘は2000g以下だったので、保育器越しにしか会うことが出来なかった。
念入りに手を消毒して保育器に開けられた二つの穴から手を入れて、指の太さしかない腕をした娘のさらに細い指に触れる。
妻が別室で授乳をする間は、長女を膝に座らせて絵本を読んであげて待った。
やがて次女も平均体重に近くなり、家に連れて帰ることができた。
安心して眠る小さな妹の姿を、ぺたんと側に座って眺める長女の姿がとてもかわいかった。
仕事も順調で役職は部長となり、給与は15万程アップしたので妻は夜勤を辞めた。
休みの日は5人で出掛け、幸せな毎日を過ごした。
次女が歩けるようになった頃、親父が経営するコーポの一室が空いたとの連絡があったので、部屋数の多いそちらへ引っ越すことに決めた。
妻と娘ふたりでひとつの部屋。
長男と僕とでひとつの部屋を使い、僕はロフトを寝床にした。
娘たちの笑う声やときどきケンカして妹の泣かされる声。
妻がふたりを叱る声。
僕の生活には幸せな音でいっぱいだった。
連れ子の長男は養子縁組として正式に僕の息子となった。
もちろん前の妻との間に生まれた息子たちにもたびたび会った。
子供が成長する姿を見るのはそれだけで幸せだ。
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