憧れの人、登場!
時間がどれくらい経過したのかは分からないが、突然何かに気付いたように、先生が「あっ」と声を上げた。
「吉野~、雪兎が来たぞ~。ほら、項垂れてないで……」
先生に肩を叩かれ、体育座りのまま、顔を上げる。
校門の所で手を振っている人影が見えた。
「お~い、雪兎~」
あれが雪兎先輩か……。挨拶しなきゃあな……。
徐々に近付いて来る人影を見ながら、俺はよろよろと立ち上がった。
「春ちゃん、おっひさ~、元気してるぅ?」
雪兎先輩の第一声は、これだった。
何というか、予想に反して、けっこう可愛い声だ。
くせ毛にタレ目、雪のように白い肌で、幼さが多少残っている顔。例えるならば「王子様」。しかし、何処か親しみを感じさせる雰囲気も持っている。ニコニコ笑いながら手を振っている彼には「ゆるふわ王子」というキャッチコピーが似合いそうだ。
「久しぶり、雪兎。俺は元気にやってるよ。そっちも元気そうだな。……あ、そうそう、こいつが俺の後輩の……」
「あ、あああ有明吉野です」
情けないことに、緊張で声が裏返ってしまった。
「宜しく~、あああ有明吉野君。ヨシノって女の子みたいな名前だねぇ」
「いや、そういう名前じゃないから。有明吉野だよ」
先生が訂正を入れる。
「えへ、ごめんね。んじゃ、改めて宜しく、有明吉野君」
「は、はいっ、宜しくお願いしますっ」
感激だ。今、俺の目の前に、あの雪兎先輩がいるなんて……。
「あっ、君は僕に憧れてこの学校に入ったんだよねぇ。春ちゃんから聞いたよ。うふぅ、嬉しいなぁ。……じゃあ、親しみを込めて、吉野って下の名前で呼んでもい~いぃ?」
「も、もちろんっ」
親しみを込めてだって! あの雪兎先輩が俺に親しみを込めてだって!
嬉し過ぎる。本当、こんなにテンションが上がったのはいつ以来だろう……。
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