第157話
吾輩が水精霊に協力してもらって発生させた精霊術の渦に翻弄されていたシーサーペントは、それが収まると今度は勇猛に立つ吾輩から冷徹に見下ろされている。その恐怖心がいかばかりかと考えると少々同情してしまうほどだ。
『チラ見せとはいえ、それだけの魔力や。出所がちんちくりんでかわええタヌキ様やゆうても、びびるっちゅうもんやな』
「……ふむ?」
相変わらず水精霊は独特のニュアンスを交えて喋るものであるから、今一つ何を言っているのかわからぬ。わからぬが…………、吾輩の魔力放出による脅しがうまくいったという趣旨のことを言っているのであろうから、まあ良い。
そしてうまくいったのかどうかというのは、むしろ目の前を見た方が早い。
ュゥゥゥゥゥゥン……
随分とか細い鳴き声の尾をひいて、シーサーペントは沖の方へと泳ぎ去って行く。その速度はかなりのもので、それだけでも必死であるということが伝わってくる。
「こんなところだな」
振り返って終わったことを伝えてやると、漁師たちとナディアは驚いている様子だった。わかりやすく目を見開いていたり、口をぽかんと開けていたりと、いっそふざけているのかと言いたくなるほどだ。
『頭から水でもかける?』
そんなことを真顔で水精霊が聞いてきたものだから、反射的に止めようとして……、いやそれもありか?などと考え始めたところで、止まっていた時間が動き出したようにナディアたちは歓声を上げた。
ふむ、まあうまくいったようでなによりだ。
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