第143話

 エリスはセヴィの町において重要人物であるジャスパーの子供だ。だから当然その旅にはそれなりの護衛というものも割かれており、シエナとアイラのほかにも五人ほどの武者たちが同行していた。

 吾輩がエリスと出会った時はゲイルを含めて五人が護衛であったことを考えると、それより手厚くなっているのはジャスパーの心配を表しているのかもしれん。

 この勇猛な吾輩がたまたま居合わせたからよかったものの、あの時は危ない目にもあっていたからな。

 

 だから安心して吾輩は自由行動できるというものであるし、万が一にも何かがあれば我が弟子が飛んでくるだろう。それくらいには信頼している。

 シエナの方はいまだによくわからんが……、まああれはあれで強者つわものではあるだろう。

 

 『この辺でどうやろかぁ?』

 

 改めて安心しながら歩いていた吾輩に、水精霊がのんびりとした調子で声をかけてきた。

 

 「……ふむ、中々良さそうではないか」

 

 気付けば露店が立ち並ぶ場所に来ていたらしい。

 少し離れた場所からはやや生臭い匂いもしてくるから、そちらでは水揚げした鮮魚を扱っているのであろうが、この場所では食べ歩きできるような調理したものが並んでいる。

 最近急速に発展した漁村であるという話であったが、こうした光景を見ると旅人が多いというのも本当なのだと実感できる。

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