第96話
ふむ? 森族だという人間が、またきょろきょろとして何かを探している。
「何やら可愛らしい子供の声が……? 好奇心旺盛な子供に答えるのは学者の務めっ!」
そして気にした声の出所が吾輩であると気付いたらしく、その視線を、続いて体の向きをこちらへと向ける。
「森族が珍しいのかい? 確かにここセヴィでは草族がほと………………」
何やら解説を始めようと指を立てて喋り始めたその人間だったが、途中で止まってしまう。なんであろう……、腹が減ったのか?
「話してたのは茶色い毛玉っ!?」
「何か文句でもあるのか?」
以前住んでいた縄張りでは年経た人間ほどよく見せた反応ではあるが……、吾輩が威厳があり機知に富んだ話者であることに因縁をつけられるのは久々であるな。
久々であるから腹が立たんというものでもないが。
「森族のお兄さん、タヌちゃんはエリスお嬢様のタヌちゃんだから、悪いことはしちゃいけないよ」
「はっ、いやそんな。あはは……」
息を荒くして手をわしわしと動かしながら、距離を詰めてきていたそいつは、露天商から釘を刺されて笑って誤魔化そうとしている。
どう見ても不快な動きであったが?
どうやら、また何やら不思議な人間が町にやってきたということのようだ。
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