第72話
「師匠……次はバルドゥルさんのとこっすか?」
アイラが明らかに不満そうに後ろをついてきている。仕方がないことかもしれんが……。
「まあ、そういうな」
温泉に入りさえすれば、そのような不満など湯に溶けて消えることだろう。
問題はこの近くに都合よくあるのかという話なのだが……、あまりに遠いと現実的とはいえんからな。
バルドゥルはいるだろうか? 深く考えずに実験農場まできたが、鍛冶屋の方にいるのなら無駄足になってしまう。
「おお、タヌキ! 教えてもらった木や骨の削りくずはすごい成果を出しているぞ? 何やら偉い学者が話を聞きに来るということにまでなっておってな。それに最近になってそもそもの作物の生育自体も良くなってきたようなのだ! お前さんには感謝してもしきれんな!」
っと……。いたのは良いが、顔をあわせた途端にすごい勢いで話し始めおった。
「ば、バルドゥルさん……? 師匠って、やっぱりすごいっすね……」
厳ついバルドゥルの迫力にたじたじとなっておるが、アイラの中での吾輩の評価が高まったようだ。農場の件に関しては地精霊から聞いた話を伝えただけだから、据わりが悪い想いではあるが……まあ、良い。
地精霊……ふむ、精霊か。精霊といえば……、いや、いくらなんでも、な。
そんなことより、ここには話を聞きに来たのだ。今度こそ有用な情報が得られれば良いのだが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます