第73話
「煮え滾る泉? 山族の多く住む火山地帯へ行けば確かにあるが……。あれはただ熱いから危ないというような甘いものではないぞ。近づくだけで人が死ぬ呪いが施されている場合があるのだ。……呪いの主が誰かも定かではないから、死精霊の住処ではないかという者もおるくらいだ」
随分と物騒な話となってきたな。
「……ふむ、死精霊?」
『そのようなものは……いないです。……が、人間たちは死とはある種の精霊がもたらすものだと信じているようです……』
む、いつの間にか吾輩の隣に、コウモリのような一対の翼を持つトカゲ――火精霊――がいた。そういえばこの実験農場はこやつがよくいる場所なのであったな。
「そうだ、死精霊というのはとても恐ろしい存在でな――」
「いないそうだぞ?」
「は? 何を急に……? いや、しかしタヌキの言うことだ、無碍にはできんが……」
火精霊からの情報を伝えてみると、バルドゥルは随分とうろたえている。
「師匠の精霊への見識はセヴィいちっすから!」
吾輩もあまり強くいえたものではないが、この流れで迷いなく胸を張るアイラもどうなのだ?
「いや! だとしてもだ、危険なのは変わりないから探そうとするのはやめておけ」
「……そうか」
バルドゥルは強い剣幕で念を押してきた。近づくと死ぬ呪いだったか……? おそらくは自然発生した毒ガスであろうな。
風精霊に頼んで吹き飛ばせば……いや、発生源を地精霊に埋めてもらえば……。むう……、やはり整備されていない火山地帯に近づくなど危険が大きいか……?
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