第45話
この目で見に行く、とは決めたものの……だ。考えてみればどこに何がでたのか知らないな、吾輩は。
と、いうわけで一旦住処へ帰ろうかと、とっとこぽこんと軽快に歩いていたところで、何やら騒がしい一団が目に入る。
「副団長! 準備整いました」
「もう一度確認しろ。特に矢と治療薬については厳重にな!」
「はっ!」
この町を守る武者集団……セヴィ騎士団というのだったか? その連中が、慌ただしく出陣の準備をしている。こやつらがよく訓練をしている広場だが、今はその場所のあちらこちらに物資が積み上げられていて、それを載せていくのであろう荷馬車も待機している。
「大事だな、それ程の大物なのか、その魔獣は?」
「む……? お嬢様のタヌキか。まあな、一度は斥候の正気を疑ったほどだ。……いや、待て! なぜ君がそのことを知っている!」
「ふむ、今知ったぞ?」
「なぁ!?」
人間はやはり愚かで可愛いな。ちょうど目についたゲイルにカマをかけたら必要な情報が手に入った。
「それはそれは大きな動く木のような見た目で、草原にはいないはずの珍しい魔獣らしいっすよ。というか師匠! 私に聞いて欲しかったっす!」
「おい、アイラ! 外部に情報を漏らすな!」
「う……、すみませんっす」
人間には尻尾はないが、もしあれば勢いよく振っているのだろうなという雰囲気でアイラが話に入ってきた。吾輩を敬う態度は良いものであるが……、ゲイルが叱ったのも一理ある。が……。
「ゲイルよ、引っ掛けた吾輩が言うのもなんだが、そなたも人の事は言えんだろうに」
「む……いや……そうだな。確かに君が言うなという気持ちはあるが、それはそれか。アイラ、強く責めて済まなかった。自分も気を付けるから互いに気を引き締めていこう」
……ふむ、やはり素直なやつだなゲイルは。副団長という立場にいるだけのことはある。
「し、師匠……っ! 私のために……。ふかふかのお腹は懐も深いっす!」
そしてアイラよ、吾輩の腹を撫でまわすのは師匠の敬い方としてはどうなのだ?
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