第17話
「…………!」
さしもの豪胆な吾輩も、驚いて全身が強張ってしまう。自慢の毛並みだって逆立っているのを肌で感じる。
「ど、どど、どうされました!? タヌキ様っ!」
「リットこそどうされた!? 様子がおかしいぞ」
思わず言葉を投げ返すと、リットはしばらくきょとんとする。心底から不思議そうにされると恐怖であるな……。
しかし、すぐに得心がいったようで「ああ!」と言いながら手を打ち合わせた。
「タヌキ様がお眠りになっている間に……、神託があったのです。あれは私がかつて幼き頃に一度だけ聞いたミティア様のお声に違いありませんでした……」
恍惚、としか表しようのない表情だ。というか、口端に涎が……。
吾輩の中に在った、控えめで温厚なリットのイメージが崩れていく音が聞こえるのだが?
それにしても、神託とな。つまりは神から言葉をかけられたということであろうが、この言い方ではリットは以前にもそれを聞いたことがある、と。
吾輩ほどのタヌキであっても神らしき存在とは一度しか会ったことがないというのに、愚かな人間にしてはなかなかやるではないか。
「それで、なんと?」
当然、気になるのはその中身だ。そしてリットの方も言いたかったのか、目の輝きをいっそうと強くして身を乗り出してくる。
「“わたくしの愛らしい
「っ!?」
耳の天辺から尻尾の先まで電撃が駆け抜けたかのような衝撃。吾輩はようやく合点がいった。あの白い空間で白髭の御仁にお会いした時に尻尾を撫でていた手、エリスと出会った日に小型人間が同じ気配だといった一番偉い神様、そしてこの教会が祀る最高神。全ては同じ存在で、吾輩が仕える存在であったということだ。
…………神獣がどうのという話を、吾輩が今の今までぽこんと忘れていたということは、内緒だぞ?
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