第8話
この様な事態でのんきに挨拶もないとは思うが……、さりとて吾輩ともあろうものが礼儀知らずと思われるわけにもいかぬ。
「吾輩はタヌキである。ミティア……という御仁については、すまぬが聞いたことがない」
『あ、ミ、ミティア様は一番偉い神様で、あなた様と同じ気配がする方です!』
ほう……わからぬ。
「気配と言われても困る。それより聞きたいことがある」
『は、はひっ!』
まずは目の前の問題が最優先であろう。質問などは後でもできる。
幸いなことに、この小型人間は一番偉い神様がどうのと語るほどにここらの事情に詳しいとみえる。であれば吾輩の知らぬことも知っていようというものだ。
「あの武者殿が緑色に光っているのは、大イノシシを撃退しうるほどの手段と認識しても良いのか?」
『イノシシ……? あっ、テラービッグボアのことですね』
てらーびっぐぼあ……、テラービッグボア? 舌を噛みそうな名称だ。
『撃退を目的としたものですが……、あの人の魔力ではちょっと足りないのではないかと……』
答えてはもらえたものの、何を言っているのか全くわからない。緊急事態であるからこそ、知ったかぶりは良くないな。聞くは一時の恥というものだ。
「すまぬが何も理解できなかった」
『も、もも、申し訳ございませんっ!』
なぜそちらが謝る……?
『あの人が僕を通して精霊術という……攻撃を、発動しようとしているのですが、その威力は込められた魔力量に依存するので……』
「あの者の持つ魔力とやらでは足りない、と?」
『そ、そういうことですっ! さすがご理解が早いです!』
あまり持ち上げられると馬鹿にされているようにも感じるな。
……ふむ、やはり理解が十分ではないが……、つまり足りないものがあるのであれば……。
「その魔力を吾輩が手伝うことはできるのか?」
『あ、あなた様御自らが!?』
「できるのか? できないのか?」
『すぐやりますっ!』
この会話はただただ疲れるだけであるな。
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