二人の勇者 ~剣と魔法で魔王を倒す~
モリワカ
二人の勇者 ~剣と魔法で魔王を倒す~
この世界には二人の勇者が存在する
一人は剣術に長けている
その勇者が剣を握れば、どんな魔物も一刀両断
その勇者に斬れないものはないとも言われていた
一人は魔法に長けている
その勇者が魔法を使えば、どんな魔物も骨すら残さず消える
その勇者に使えない魔法はないとも言われていた
しかし、そんな二人にも欠点が存在する
剣が使える者は魔法が全く使えず、魔法が使える者は剣を持ったことがない
つまり、片方にできることはもう片方にはできない
そんな二人がお互い助け合いながら、生活していればいいのだが……
「おい、眼鏡野郎! それは俺の剣で――」
「魔法の方が早く処理できます 脳筋の誰かさんと違い、私は常に効率のいい行動を心がけておりますので」
二人の勇者は復活した魔王を倒しに、魔王城に向かっている所だった
魔王城の道のりは、いくら勇者とて険しく簡単に攻略できるようなものではない
「だからって俺の手柄を横取りすんじゃねえ!!」
「あなたが遅いからでしょう それに、いまどき剣なんて時代遅れもはなはだしいですよ」
魔王城に向かうまでにも、多くの魔物が二人の勇者に襲い掛かってくる
簡単に倒せる魔物ばかりだが、如何せん数が多い
「これじゃあ、らちがあかねえな」
「ええ 認めるのは嫌ですが同感です」
剣の勇者が構えの姿勢を取る
そして、大きく言い放つ
「俺の剣の威力、受けてみやがれええ!!」
剣の勇者が剣を振り回すと同時に、周りにいた魔物が一掃された
剣の勇者は ふう と汗を拭きながら言う
「どうだ? これが、剣の凄いところだ 思い知ったか!?」
「息を切らしながら言われても、説得力はありませんよ? ですが、道を開いてくれた事には素直に感謝しましょう」
魔法の勇者は剣の勇者を置いて、先に進む
その後を追いかけるように剣の勇者がついてくる
「何だあ? 俺の剣戟に感動したなら、もっと褒めてくれてもいいんだぜ?」
「別に そんな事は一切ありません ほら、そんな事を言ってるから囲まれてしまいましたよ」
先ほどの位置からかなり進んだが、魔物はまだうじゃうじゃいる
これも魔王が復活したせいだろう
「今度は私がいきますよ あなたにばかり頼るのも癪ですから」
「へえ そうかい」
剣の勇者は地面にドカッと座り込む
これ以上自分は何も手を出さない、という意志の現れだろうか
「ではいきますよッ!」
魔法の勇者は自身の前に、魔法陣を展開させる
その量は二つから三つ、三つから五つと増えていく
「弾けろッ!!」
魔法の勇者が魔法陣を発動させると、軽度の爆発が周りで起き魔物を一掃した
魔法の勇者が眼鏡をクイッと上げながら言う
「どうですか? これが魔法というものですよ!」
「へいへい それは良かったな」
剣の勇者は魔法の勇者の話を聞かずに、先へ進んでいく
その後を、魔法の勇者が慌ててついて行く
「ここが魔王城ですか」
「ああ 思っていたよりでけえな」
二人は魔物を撃退し、ついに魔王城にまでたどり着いた
魔王はこの世界を混沌の渦に巻き込もうとしている恐ろしい存在だ
何としても倒さなければいけない
まさに二人の勇者には、この世界の命運がかかっていた
「何だあ? ここまで来て緊張してんのか?」
「緊張などしていません これは、武者震いです」
「ああ そうかい」
二人の勇者は、魔王城の門をゆっくりと開ける
大きな音を立て、城門は開く
「いよいよだな」
「そうですね」
「邪魔だけはすんなよ」
「そちらこそ」
二人はそれぞれ顔を見合わせ、門をくぐった
中はシンとしており、明かり一つ灯っていない
「暗いな」
「明かり、付けましょうか」
魔法の勇者は手に小さな炎を浮かべる
周りがほのかに明るくなる
その姿を見て、剣の勇者は驚く
「そ、そんなことして熱くないのか?」
「これですか? 熱くありませんよ それより先を急ぎましょう」
「お、おう」
二人の勇者はそれぞれのに思いを抱きながら、先へと進んでいく
狭い通路を歩いていると、突如魔物が出現した
「ここは私が――」
「アホか!? お前の魔法は広範囲のものばかりだろ? こんな狭い場所で使ったりなんかしたら魔王城が崩れて、俺達までぺちゃんこになるだろうが!」
「ううッ……」
珍しく剣の勇者に正論を食らった魔法の勇者は何も言えなかった
そして、剣の勇者は魔法の勇者に向けて言う
「剣も役に立つときがあんだよ」
そう言って、剣の勇者は魔物をバッサバッサと切り裂いていった
その時間、わずか数十秒だった
「ほら もう少しだ」
「あ、ああ」
二人は共に協力しながら、魔王の間まで到達した
扉の隙間から瘴気が漏れ出している
余程強い力を持っているのだろう
二人は今まで以上に気合いをいれる
「なあ こんなところで言うのもあれだが 俺も魔法使ってみたいわ」
「…………はい?」
「いやあ お前を見てたらさ、魔法って便利なんだなって思ってさ 嫌なら別にいいけど」
「珍しい事もあるものですね」
魔法の勇者は眼鏡をクイッと上げながら言う
「私も剣に興味が出てきたのです 魔法だけではやっていけない場面も、これから先出てくるでしょうし もちろん、あなたが嫌なら無理にとは言いませんが」
「おお! そうかそうか!!」
そして、二人は互いに約束した
この戦いが終わったらそれぞれの特技を教えあうことを
二人はついに巨悪の根源 魔王と対面した
明らかに悪そうな顔をしており、今にも襲い掛かってきそうだ
「よくぞ来た、勇者どもよ この世界には勇者が二人いると聞いたときは、さすがの我も驚いた だが、今の我にとってこれ以上の相手はいない さあ! 思う存分 戦おうではないか!!」
魔王は片手に剣を、もう片方の手には青白い炎を宿していた
魔王は二人と違い、剣も魔法も両方こなせる
「聞いていた以上だな」
「ですが、ここで私たちが引けば人類に未来はありません」
「だな」
二人は魔王へ向けて攻撃する
二人はそれこそ命を懸けて戦いに臨んだ
その結果、まだ負けてはいないものの勇者たちは劣勢を強いられていた
それもそのはず それぞれの勇者が使う剣や魔法を魔王は使ってくる
まるで自分自身と戦っているかのような感じに、二人は陥っていた
「これはやべえな」
「私の魔力も残り少ないです」
「ちッ!」
剣の勇者は舌打ちをし、地面を思い切り叩く
自分が今まで使っていた剣によって、追い込まれていくのは屈辱だった
それは剣の勇者だけではなく、魔法の勇者も同様だった
「勇者というものはその程度か? 二人もいるから我も本気を出そうかと思っていたが、出すまでも無かったな これで終いだ」
魔王は剣に魔法をぶつける
その瞬間、剣は赤黒く輝き魔剣と化した
「自分が使っていた剣や魔法によって殺される気分はどうだ!? 悔しいか? 悲しいか? 辛いか? だが、そんなもの考える事もなくなる 何故なら今、ここで死ぬからなああ!!」
魔王は自身の魔剣を振り下ろしてくる
剣の勇者は死を覚悟した
しかし、いつまでたっても魔剣は降りてこない
「何を、諦めてるんですかッ!?」
気づけば魔法の勇者が、魔剣を魔法で防いでいた
魔法の勇者も魔力が残り少ないと言っていたにも関わらず、魔法を使って剣の勇者を助けてくれた
「約束、したでしょう? 魔王との戦いが終わったら、それぞれ剣や魔法を教えあうって! その約束を、あなたは簡単に破るんですか!? 私とあなたの絆は、そんな安っぽいものだったのですか!?」
魔法の勇者は苦しそうに言う
かなり無理をしているように見えた
「そうだったな 俺もこれまで以上に強くなるために、お前になんか負けないくらい強くなるために、魔法を教えてもらうんだった だから、こんなところで終わっちゃあダメなんだ!」
剣の勇者は再び立ち上がり、魔王に剣を向ける
そして、大声で告げる
「魔王ッ! お前には感謝している! ここにいるのが誰と誰か知っててその攻撃をしたんだな?」
「何をたわけた事を! …………はッ! まさかッ!!」
魔王は己のしたことの重大さに、ようやく気づいたようだ
そう この場所にいるのは魔王以外に二人いる
「剣の勇者と魔法の勇者 二人の力をあわせれば、お前の魔剣なんかはるかに越える魔剣が出来上がるって訳だ!」
「……笑わせるな 魔剣を作ったこともないくせに、でかい口を叩くな!」
剣の勇者は魔王の魔剣を自身の剣ではじく
そして、魔法の勇者に話をつける
「おい、魔力はまだ残ってるか?」
「あなたのしたい事は、始めから分かっていましたよ」
魔法の勇者は、純白の炎を剣の勇者に見せる
その炎は、まるで二人の心の中を現しているかのようだった
「さすがだな」
「何年一緒にやってきてると思ってるんですか」
二人の勇者は、この世界に同時に誕生した
優しく、時に厳しく育てられ、ここまで強くなった
剣の勇者は、魔法の勇者が作ってくれた純白の炎に自身の剣をあわせる
剣は白く輝き、魔剣と化した
「ば、バカなッ!? そんな簡単に魔剣が生成できるわけがない! できたとしても我の魔剣に敵うはずが――」
「なら、実際に戦ってみるしかねえなあ!?」
剣の勇者は魔王へ一気に距離をつめる
魔王も負けじと応戦するが、ほぼ互角にまで追い込まれる
「認めんぞ! 我はこんな結果、決して認めんぞおおお!!」
魔王は口から炎を吐く
突然の魔法に、剣の勇者の反応が遅れる
「シールドッ!」
魔法の勇者がとっさに張った魔法壁で、何とか耐えることができた
剣の勇者は魔法の勇者に目で ありがとう と伝え、さらに斬り込む
「これで、終わりだああああああ!! 一刀両断ッッ!!」
魔王は二人の力で生成した魔剣によって、真っ二つになった
魔王が散ったのを確認した勇者は、その場に倒れこむ
「終わったんだな」
「そう、みたい、ですね」
剣の勇者は、魔法の勇者の呼吸がおかしいことに気づいた
魔法の勇者は、今まで見たことがないくらい顔が青ざめていた
「おいッ! しっかりしろ!」
「剣の、勇者 私は、もう、だめかもしれない」
「そんなこと言うな! 俺はまだお前に剣も教えてないし、魔法だって教えてもらってないんだぞ!?」
魔法の勇者の顔は青を通り越し、白くなってくる
「魔力を使いすぎたかもしれない 少し眠る……」
「そ、そうか……」
そう言って、魔法の勇者は目を閉じた
魔法の勇者の寝息だけが聞こえる
「聞こえない今だから言えるけどさ 今までお前のこと羨ましいと思ってた 魔法って剣と違って綺麗だし、結構便利なんだなって改めて思ったんだ」
「…………そうですか」
返ってきた返事に、剣の勇者は顔を赤くする
「おいッ! お前起きてんじゃねえかよ!」
「……グウ」
「寝たふりすんなああ!!」
それから街に戻った二人の勇者は街の人達に大喜びされた
剣の勇者は魔法の勇者に魔法を、魔法の勇者は剣の勇者に剣を教えてもらっている
「ま、俺くらいになると魔法も簡単にできちまうな」
「私にも剣くらい思うように扱えますとも」
「おお、言うようになったな」
「私は立派な魔法剣士を目指してますから」
「なら、一勝負するか?」
「望むところです 負けても泣きべそかかないでくださいね」
二人の魔剣が重なり合った
FIN
二人の勇者 ~剣と魔法で魔王を倒す~ モリワカ @Kazuki1113
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます