第76話 包青side
「
「一ヶ月……か。良く持った方じゃねぇか?……遺体をどうするかだな。鄧家に使いはだしたのか?」
「はい。鄧家では既に離籍した人間と言う事で知らぬ存ぜぬです。遺体の引き取りはしないでしょう」
「まぁ……そうだろうな。下手に情を見せちまえば自分らも連座だ。
「後宮内で起こった事と、主犯が飽く迄も乳母ですからね。郭丞相も動いたようですし……」
「仕方ねぇ。
「直ぐに準備にとりかかります」
「頼む」
その後、
罪人故に墓碑すらなかった。
それにしても――
「誰も来ねぇな」
「罪人になった最下級の妃の墓になど誰もきませんよ」
「一応、死んだことは知らせたんだろ?」
「えぇ……」
「貴妃辺りは来ると思ったんだがな。義姉妹だろ?」
「義姉妹といっても法的には全くの赤の他人です。あんなものは自分の派閥を拡大するためのものでしかないんですよ。後宮では特にそれが顕著に現れています」
「あぁ~……」
「それと、元賢妃はどうやら他の妃達から遠巻きにされていたようですしね」
「意外と評判悪かったな」
「はい。ですが、納得できるところもあります。他の妃と交友を深めないばかりか下に見ていたとは……。そればかりか、己が何も言わずとも周りが察して先回りして行動するのが当たり前、という思考をしていたらしいのです。まったく、思い上がりも甚だしい限りですよ」
「人は見かけによらねぇよな……」
「妃達の話では、元賢妃は損得勘定が大変激しかったようですね。女人はよく見ているものだと感心してしまいましたよ。賢妃の野心を見抜いていたようです。上っ面を取り繕っていてもちょっとした場面で本性が見えるようで、四夫人と他の妃とでは態度が微妙に違っていたとか……」
「うわぁ……」
大人しいとしか思わなかった元賢妃の意外過ぎる素顔。
後宮の女は碌なのがいねぇな。
「それにしても……宜しかったのですか?」
「なにがだ?」
「あの乳母の背後にいたであろう人物を探り当てなくて」
「……なんだ、気が付いていたのか」
「はい。確証はありませんが」
さすがだな。
こいつは人の感情の動きには聡いし機微にも鋭い。
「探した所で意味がない。証拠はないからな」
「はい……」
処刑した乳母は元賢妃のためにと暴走していた。その乳母を放置していたのは元賢妃だ。いや、「暴走」させられたと言うべきだろう。
実家の権勢と後宮での権力を思うが儘に振る舞う素直な徳妃とは違い、貴妃は分かりにくい。
丞相自慢の美貌の娘。
皇帝の寵愛を受け、子を数人産んだにも拘わらず未だに立后できていない。
郭家としても予想外だった筈だ。そこにきて、淑妃の懐妊。計算が狂ったと思ったに違いない。貴妃が乳母を唆して誘導したのか。そして丞相がどこまで絡んでいるのかが問題だ。
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