第40話 巽夫人(母)side
酷いわ、酷いわ!
出産を終えたばかりの陀姫を
陀姫が夫以外の子供を産んだ?
陀姫が巽家の血を引いていない?
陀姫が旦那様の実子ではない?
私が旦那様に聞いた数々の話。
それらは今まで知らなかった事実だった。
「それがなんだっていうの!旦那様だって陀姫を娘としていたのよ?なら、楊家だって陀姫とその子供を家族として大切にするべきでしょう!? 陀姫が嘘をついていたからって何!? 圭殿は陀姫の“夫”でしょう!広い心で許してあげる度量がなくてどうするの!! 旦那様、これでは陀姫が可哀そうですわ。離縁させて家に戻らせてはどうかしら? 陀姫と子供の面倒くらいは巽家でみれますわ! そうだわ! いっその事、
「いい加減にしないか!」
「だ、旦那様?」
「先ほどから黙って聞いていれば……そのような馬鹿げた真似ができる筈がないだろう!!」
「で、でも……杏樹は賢い子ですもの……楊家の怒りだって沈めて上手く回してくれます……」
「そういう問題ではない!只でさえ、婚姻を入れ替えさせているのだ、これ以上の暴論が許されるはずがない!」
「ですが……」
「それに、先ほどから杏樹、杏樹と呼び捨てにしているが……あの子は既に皇帝陛下の妃。それも『正二品の妃』だ。寵愛も著しいと世間でも専らの評判なのは知っているだろう。お前のしようとする事は皇帝陛下からお気に入りの寵妃を奪い取り他の男に献上する行為だ!だいたい、どうやって杏樹を楊家に嫁がす?後宮から呼び戻して無理矢理嫁がす気か?愚かな……それを実行する前に我らが反逆罪として滅ぼされる!! そんなことも理解できないとは……誰か!この愚か者を地下に幽閉せよ!!」
なに!?
何が起こっているの?
扉から出てきた下男に両手を掴まれて訳が分からないまま地下室に入れられてしまった。
屋敷にこんな場所があるなんて知らなかった。
それよりも、何故、私がこんな場所に?
何時も優しかった旦那様。
聞いたこともない怒鳴り声だったわ。
どうして怒られたのかしら?
私は
「だって……今までそうやって上手くいってきたじゃない……それなのに……」
分からない。
何がいけないのか……。
杏樹が皇帝陛下の寵妃だからいけないの?
……分からないわ。
寵妃だからってなに?
私の娘に違いないでしょう?
なら、私の言う事を聞くのが“娘”のためというものだわ。
「それの何がいけないの……」
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