ワイスとロット、おまけの喋る熊(渋め)
空き缶文学
プロローグ 出会い
真っ暗だった。
暖かさもない。
何日間も放置されて崩れてしまった人間のような物が小屋にいる。
薄汚れたシーツの上に、子供が二人。
栄養が行き届いておらず、皮膚が荒れ、骨が浮き出るほど薄い身と膨らむお腹。
息も絶え絶えのまま、緑色の瞳は見つめ合う。
「ロット」
「ワイス」
枝のような指を絡める。
「うまれかわっても……いっしょだよ」
約束を交わした。
涙も出ないほど渇き、瞼を閉ざす。
小屋全体が揺れ始めた。
扉が跳ねるように動く。
また小屋が揺れる。
ヒンジが弾け飛ぶ。
窓ガラスが割れ、散らばる。
月の明かりが小屋に差し込んだ。
弱々しい瞳に映る影は天井にぶつかるほどの巨体。
ぶかぶかの毛に頭部の丸みある耳。
突き出た鼻と口。
息を荒げて仁王立ちしている。
庇い合うように身を寄せることしかできない。
『腹、減ってるのか?』
「うぁ」
「おなか、いたい」
『ここを寝床にさせてくれ。そうすれば食料と暖を約束する』
生気のない瞳はやがて、瞼を閉ざした……――。
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