第2話 未知との遭遇

 我は、打ち震える──恐怖によって。










 小娘達に連れてこられた箱のような建物。


 そこに連れてこられたのは、まぁいい………と思っていたのだが、間違いだった。




 我は、未知なるものを見て恐慌をおこしつある。




「はーい、痛くないよぅー?」




 白いローブを着た、髭面親父が猫撫で声とか…気色悪いのである。


 その右手には、見たこともないような物が握られている──先端は針のように細い銀色、そのあとに良く解らないものがくっついているが何ぞあれ!


 とがった針みたいなもの、我に向けて何が“痛くないよぅー”だ!


 どう見ても刺す気であろうが!


 あんなもん刺されたら痛いに決まっておるだろうが!




「ジタバタすると、もーっと痛くなるからねぇー」




 何、煽ってるのだ!


 動こうが、何しようが、痛いものは痛いだろうが!


 小娘、我を助けぬか!


 何、ぼーっとこちらを見てるんだ!




「はーい、打つよー」




 銀色の針は我の体に突き刺された。


『ギャァァァァァァ………。』




 我の口から出たのは、「キャンキャンキャン」という甲高い鳴き声…あれ、我の渋い声何処行った……。




 我はぐったりと崩れ落ちた──




「取り敢えず家に入れてもらえそーだね」


「ノミとかそういう駆除もしてからよー」




 小娘達の声が遠くで聞こえる。


 まだあるのか……?


 我、命幾つあっても持たない気がしてきた…。




「はい、お口開けようねー」




 何、ぐいぐい口をこじ開けようとするのだ!


 押さえつけて、口開けようとするとか鬼畜すぎないか?


 神狼フェンリルたる我に向かって、なんたる狼藉……。


 うわっ!


 何を口に放り込んだ!


 ………もぐもぐ。


 あっ、旨いなこれ。


 うん。おかわりが欲しい。


 我、この世界に来て初めて食事したかも……。


 


「はい、いーですよー」


 


 いや、良くないぞ。


 我、痛い思いしかしていないんだが………?


 小娘、謝罪を要求しろ!


 さっきのをもう一度だな……。




 いや、小娘我の首に何輪っか付けてるのだ。


 その先に紐…引っ張るな!


 ぐ…る…じ…い……。




「帰るよー」




 うん。


 引き摺られるより、我は自分で歩くことにする。


 そうすれば苦しくないな!

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我、屑勇者とおさらばした先で邪神より怖いものに会ったんだが… 風見渉 @Shou_k89

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