眠いといえば、なんかの策略なのか?

バブみ道日丿宮組

眠い

「あぁ……居残りかぁ」

 学習室の中には生徒は自分しかいない。いや、目に見ないだけで幽霊がいたりとかもしないんだけどね。

 残された理由は、授業中に居眠りをしてたから。

 うん、わかるよね。どうしてもさ、お経のようなリズム感があるのは眠気がずとーってくるんだ。

 シャー芯を指に刺したり、目をこすったり、頭を回転させてみたり、色々やった結果、グースカ寝てたってわけ。

 先生も起こしてくれればいいのに、終わったときに起こして放課後学習室にくるようにって話なわけよ。ありえないよなぁ。わざわざ怒るために呼びつけるってわけでえしょ。無視して家族呼ばれるわけにもいかないし、こないわけにはいかない。

 でさ、眠りをまともにしてる人は、子供ぐらい。体力も大人以下なので、お昼寝したりして体調を管理する。

 学生たちはといえば、休憩時間10分というのでストレスを発散させる。世間話したり、野球の真似事したり、トイレにいったりとかだ。

 制限時間がある生活が悪いはいわない。

 義務教育ってのものは、人が人になるために成長な精神療法。

 それでもダメなこはダメで、教室での授業ではなく個別の部屋でそういうことを行ってたりする。ここの学習室も同じ用途でよく使われてる。

 てっきり誰かが先にいるかとおもったんだけど、それはならなかった。もう帰宅したあとのなのかなと思っていれば、

「はい?」

 扉がノックされたので、振り返る。

「先生ですか?」

 扉があけれて、ご対面。

 お互い知らない人でーー無言に。

 普通の制服姿の私と、黒いドレスのようなものを着た見た目は同じぐらいの女子。

「え、えっと……」

 女の子はぷるぷるしだした。

 あれか、初対面とかだとテンションがおかしくなったりするやつか。

「あ、あの大丈夫? ようがあったんだよね? 私もね、先生にお残りするように言われたんだ」

 と、隣の椅子を強調。

「あ、あ、はい」

 静かに入ってきて、女の子は座った。

 すごくちっちゃかった。靴は高そう。ブランド品かな? ってことはこの制服も高かったりする? 入学案内にはこんなのが載ってきた記憶がまるでないんだけど。

 唯一共通点があるとすればスクールバッグだけが私のものと同じ。

「あのさ、あなたも居眠りをしたから、残されたの?」

 話題がないのも空気が嫌なので。

「……? 違いますよ」

 まじめそうな印象があるからなぁ……私とは違うか。

「私さ……先生もう30分ぐらい待ってるんだよね」

 会議でも始まってるのだろうか。

「忘れられてるってことはないんだろうけどさ。暇だよね」

「そうですか」

 彼女はカバンから筆記用具とプリントをテーブルに出した。

 隣なので、なんのプリントだろうと見てみれば、よくわからなかった。

 知らない言葉。

 アメリカ語でも、中国語でも、イタリア語でもない。

 知らない文字がそこにあるし……時折なぜか光ってる。

 書こうとして出した高そうなボールペンは、プリントに何かを書いたがそれを私は確認できなかった。

 修正ペンなのか、あるいは光に当てると光るペンなのか。

「……」

 彼女は無言で作業を開始したので、私は席を立って外を見ることにした。

 放課後だし、部活ぐらいやってるだろうと思ったのだが、誰もいなかった。

 むしろ、空気が違った。

 夏なのにヒヤヒヤと肌が感じてる。ぶるりとした。彼女の方を振り返ってみると、特に異常を感じてなさそうだった。

 まぁそういうこともあるかなと、席に戻り数分。

「できました」

 静かに彼女が呟いた。

「何ができたの?」

「これです。答えがここにあります」

 プリントに書かれたのはやはり読めなかった。

「先生がこないのはきっとわたしがここにくることを予期してのことでしょう」

 うーんと?

「わたしは夢魔と呼ばれる異種族の生徒です」

「夢魔?」

 なんのこと? アメリカ人とか、ドイツ人とかそういうやつ?

「夢の世界に最近囚われやすいんじゃありませんか?」

「囚われやすいというか眠くなる授業だったと思う」

 みんなもそうなんじゃないかな。

「書かれたことは、何度も起こしたということです。つまり起きない熟睡。それは永眠に近いものです。わかりますか」

「死ぬってこと?」

 それは違くない?

「他の生徒に攻撃を受けてしまったようです」

「えっと夢魔に?」

「はい」

 うーん、信じたほうがいいのか、何の宗教の話をしてるのかとキレたほうがいいのか。

「これから、これをあなたの背中に書き入れます」

「えっ? 入れ墨ってこと?」

「どちらかといえば、シールですね」

「なんの意味があるの?」

「攻撃を仕掛けてきた相手がわかります。あと若干のレジストを得られます」

 怪しい対策だけど、無料そうだしお願いしてみようかな。

 私は別に授業をサボりたいわけじゃないからね。

「服を脱いでください。もちろん、下着も脱いでください」

「えっ? 全裸ってこと?」

「靴下は大丈夫ですよ。これらを貼り付けますので」

 バッグから取り出された何枚ものレポート(やはり文字は見えない)。

「わ、わかった!」


 これが私と夢魔の彼女がはじめて邂逅した物語だ。

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眠いといえば、なんかの策略なのか? バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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