第55話 講和と選択。そして。
翌日、百里基地へ向かい F-2Aの飛行を見せた。
いまだ、お近くの在日米軍は混乱しているようだ。
見学のため、三沢から F-35Aを持ってくるという意見もあったが、きっと差は分からないだろうと意見が落ち着いたためだ。
実際、ステルス機であるF-35Aよりも、最高速度はF-2Aの方が早い。
抜けるような空を、轟音と共にバーナーの炎が通り過ぎていく。
調子に乗ったパイロットが、途中にループやエルロン・ロール の曲技もはさんできた。
軽く2機による模擬戦も入り、30分ほどで見学は終了させた。
まあ共和国全員の顔を見れば、成功だと言う事が理解できた。
一緒についてきた、シウダー王国アルチバルド王やシャジャラも口を開けて驚いていた。
「どうです、衝撃波の関係で、音速は越えていませんでしたが、十分早かったでしょう」
「あれを、人が操っているのか?」
「ええ。訓練は必要ですけれどね」
「一機いくらほど出せば買える?」
「そうですね。単純にお金を出せば買えるものではないのですが、120億円程度でしょうか?」
「120億円とは、一体」
そう言う代表を、おれがからかう。
「共和国は、ほとんど砂漠だからな。国を半分くらいと1機交換じゃないか?」
「なっ、なんと本当か?」
そう言って真面目に青ざめる。
「冗談だ。ただアメリカと言う国で、およそ100平方キロメートル100億位だったよな」
「ビルゲイツの話ですね。あの価格は、アリゾナでしたか」
「まあ土地は、値段次第だからな」
「そんなに。だがあんなに何機も持つのを考えると、本当に国が無くなってしまう」
なんだか、ぶつぶつ言って考え始めてしまった。
午後からの、講和会議ではすでに力なく、ひたすらハイを繰り返していた。
シウダー王国への弁済は、今は諏訪王国のものと言う事で、結局周り廻って俺の所へやって来たし、国境でのいざこざは共和国からの攻撃が発端ではあるが、俺の良心が耐えられず、半分だが残された家族に見舞いを出すことにした。
日本からは、変な前例を作るなと言われたが「俺が決めた」と言って終わらせた。
と、ここから後が少し面倒だった。
大陸の真ん中で調査をしていたガルーギからの報告書。
湖の底よりも下で、妙な波動が検出された。
その報告を出し、日本とシウダー王国。それに共和国と諏訪王国での管理問題の話も決めようとなった。
直接日本には関係が無かったが、シウダー王国が日本の自治区として併合されるとなり、お人好しなことに大陸に関わる問題として受けてしまった。
状況からすると、原因を作ったのは共和国の為、いま諏訪王国が行っている監視を共和国が行う事。
緊急通信用施設や計測システムを3国で配備する。
魔王が復活したときには、その対応をする。
ただ、日本も俺もその魔王がどれほどの脅威かが分からないため、両国に残った文献をまとめてもらう事にした。
ただそいつの力で、大陸の形が変わった事や、殺しても死なないと伝承が残っているようだ。
それと封印用魔道具の復元。
それは責任を持って、共和国が行う事になった。
今復活を行っていても、また魔道具で封印をできるかもしれない。
そんな期待はしたのだが、世の中そうはうまくいかない。
話が終わった少しあと、なぜか俺の名前で、共和国に戦時被害者家族救済年金という組織が作られていた。
一時金や、仕事のあっせん。保育施設や児童福祉施設。
そんな仕組みが、すべての町に造られていた。
これは、日本に来た時に社会機構などについて、資料が求められたので、簡単な歴史や社会的な発展の推移をまとめたものを作成し渡していた。
共和国自体も、考える所があって始めたことなのだろう。
作ったのは日本だけどね。
シウダー王国と同じく、インフラと通信網。
医療関係が優先的に整備された。
特に、昔からある風土病は、日本も陸続きになった為、他人事ではなく、早急に対応を行ったようだ。
日本の医療関係者を悩ませたのは、もっぱら俺の国だったが。
進化の仕方が、常識はずれでずいぶん困ったようだ。
国を構成している魔族自体が、特殊で人によっては哺乳類でもない。
四天王のガルーギなど、鳥に変化をするので、中央部の監視が終わった後、日本で検査という検査を行った。
卵生の魔族と哺乳類の魔族が、子供を作ると母親の出産方法で、鳥が生まれたりする。逆もあり、卵から、哺乳類が生まれる。
関係各位大パニックを起こしたようだ。
そのため、研究者から、なぜか俺が目を付けられたらしく、早く子供を作れと急かされている。
そんな平和な中、おおよそ3か月が過ぎた頃。大陸中央の監視部隊から湖が吹き上がったと連絡が入る。
夜中だったが、湖を囲む山脈の山頂付近に造られた、自国の観測所に関係者が集まる。当然観測所は、シウダー王国側と共和国側に造られている。
集まった時には、現象は沈静化していたが、そのまま待機。
その間に、各国の軍が集まり始める。
そして夜が明け、日が差し込む湖の中央部が吹き上がった。
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