第52話 講和か降伏か

「さてと、どういう経緯にしろ秘書官ラポラにより、思わぬ情報が手に入った。どう思う」

「どう思うもこう思うも、この写真と、地図。そしてこの前の攻撃。シールドを突き抜け空を飛んできたものに、防衛用魔道具がピンポイントに破壊された。それは事実よ。この資料が本物なら、つじつまが合うという事よ」


「ペルトラ統領はこういっているが、カルミ統領も同意見かね」

「ええ、全部が全部嘘ではないでしょう。この写真。中に違和感のあるものがいくつかあるけれど、それを除外しても、とんでもないわね。この空を飛ぶ船はうそね。でも、大きな人型の魔道具は実物ね。こんなものが来たら、弓どころか城壁も役に立たないと思う」


「コイヴィストとコルペラ統領にもこれを見せて、講和か降伏か決める必要があるな。もっとも彼らなら、やればなんとかなる。やらずに尻尾を振れるかと言いそうだけどな」

 それを聞いて、ほかの二人も納得する。



 連絡を取って3日後。講和を前提として会議をしようと、コイヴィストとコルペラ両統領から連絡が入る。

 まだ彼らに、この資料は見せていない。

 首をひねる、代表ニスカヴァーラ。


 1週間がたち、再び全員が集まる。

 この時、共和国内では、まるで江戸時代の打ちこわしの様な騒動が、発生し始めていた。


 その為、いつもの馬車が使えず、皆が自身の尻をなでながら集まることになった。


「まいったな、荷車に隠れてこないといけないとは」

「ああ。それも無価値を示さなばいけないから、ボタの運搬に見せかけてきた」


「危険な中すまなかったね」

 そう言って、代表ニスカヴァーラが、秘書官ビルギッタ・ラポラ連れてやってくる。

「来た早々で悪いが、この資料を見てくれ」

 例の資料がテーブルの上に並べられる。


「うおっ。なんじゃこれは。うちの調査採掘。この穴はつい最近のもの。こんなもの何処から?」

「日本からだそうだ。横にあるのが、そこから起こした地図だな」

「むう。この右下のが縮尺と距離……」

 そこで両統領は、越えられないと話が来ていた壁を見る。


「これだな。本当に海から、山脈のてっぺんにまで至っておる」

「いったい、いつの間に」


「なんだね?」

「ああこの国境の壁だ。この絵では少ししか見えておらぬが、もっと分厚い壁だ」

「何かで線を引いたのだと思っていたが、壁があるのか?」

「そうじゃ。兵たちに何とか越えさそうと思ったのだが、至る所に魔道具が仕込んであって越えることができない」


「ではついでに、こっちも見てくれ」

 写真を両統領に向けて押し出す。


「これは、この前飛んできたものじゃな」

「おっおい、この板の下にぶら下がっておるものは、ミサイルという武器らしいぞ」

「こっちは、30mm機関砲? 毎分300発。確かにこの前奇妙な物が付いておると思ったがそうか武器だったのか」


「納得したかね。比較的主となっている日本という国が、お人よしらしくてね。講和で行けそうな感じだがどうするね」

「らしくないの。呼んでおいて殺せばいいじゃろう」

「殺すと、攻撃が面倒じゃないか? 人質として使えば、攻撃はできんのじゃないか?」

「おおっコルペラ。それはいいな」

 盛り上がっている、2人に声をかける。


「この前、我々に説教をした男。彼は魔王だそうだよ。人質にとれると思うのかい」

「魔王と言っても今の時代。そんなに脅威とはならんのじゃないか?」

「先ほど君たちが言った壁を、一瞬で作ったようだよ。魔王様は」

「なに? こんな規模の構造物。土魔法じゃとしても魔力が足りんじゃろ。一体どうやって」


「さあ、うちの秘書が言う所によると、日本の攻撃など、魔王様は意にも介さないようだ」


 二人は、ぐぬぬとうなっている。


「まあ今日は、それを含めて考えよう。どうやっても勝てる目が見えなくてね。講和か降伏か どっちがいい。早く決着をつけて、打ちこわしも何とか収束させなければならん」


「うーん。無理なのか。そうじゃ船はどうじゃ。この中にも船の画は胡散臭い空を飛んでいる物ばかり。本物は無いのじゃないか?」

 そっと、ビルギッタが手を上げる。


「ご報告いたしましゅ。日本国は、わが大陸と重なる前。島国であり海洋国家だったようです。その為、浮かぶ船も、潜る船も強力な物を備えていると聞いております。写真の中にも入っていたはず。これなどがそうですね」


 取り出したのは、イージス艦。潜水艦。そしてヘリコプター護衛艦。

 イメージと違う形なので、船とは気が付かなかったようだ。


「これが船? 浮かぶ船に、潜る船だと。船が水に潜る。すると、魔導探査機までもう実用化しているのか」

「コイヴィスト。魔導探査機とはなんだ?」

「今うちが作っている魔道具だ。地中深くに眠る鉱石を探査するために開発中だ。ある一定の音つまり振動じゃな。それを放つと、物によって反射してくる音が変わる。それを、音から魔力に変えた物じゃ」


 それを聞いて、加工のプロ、パッラスマーが納得しようだ。

「距離測定器の改造版だな。あれは、音の返ってくる時間を計っておるが、ふむ、ものによって周波、つまり波が変わるのか。それは面白い」


「ああ、まあそれは良いが、日本はそれをすでに使っておると言うことだ。海など潜ればすぐに暗くなる。むかし、鉱脈を探すため、魔道具を入れ樽を落として撮影したが、すぐに暗くなった。それに、水の重さも馬鹿にならん。樽はあっという間につぶれたわい」


「で、どうする?」

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