第24話 魔王城へと出発

 リーゾが来たのは、翌日の10時過ぎだった。

 それはもう見るも無残で、疲れ果て這う這うの体でやって来た。

〔お疲れさん。ちょっと休憩してから案内してくれ〕

 そう言いながら、聖魔法というか,、疲れよ飛べとイメージして力を使う。


 するとリーゾの体を、金色の光が包む。


〔おおっ。なんだこれ。おおっ、疲れが消えた〕

 リーゾは自分の体をぺちぺちと確認をしている。

 ちなみに、リーゾは1/2tトラックに乗ってもらう。

 幌を外して、何とか乗れるだろう。



 そうしてやっと、出発を開始した。

 燃料や、テントに食糧。その他必要そうなものを満載にした1/4tトレーラを引っ張っている。


 この森に生えている木は一本一本が太く、管理でもしていたのか、かなり植わっている間隔が広い。

 たまに、蔓延(はびこ)った根が道をふさいでいて乗り上げる。


〔こりゃ、楽でいいな〕

 リーゾは車に乗りご機嫌の様だ。

 俺たちは、当然一番先頭の車両。

 俺が助手席で、運転手は渡辺さんだ。


〔うん? もうそろそろだな〕

 リーゾがそう言ったと思ったら、威圧がふりまかれた。

〔どうしたんだ?〕

〔この辺り厄介な鳥が居てな。襲ってきやがるんだ〕


 そう言われて、意識を広げてみる。

 かなり上だが、木の中に何かの気配がある。

 それも、数百単位だ。


〔探知したか?〕

〔ああ、数百単位でいるな〕

〔あいつら集団で出てきてな、。上からすごいスピードで降ってきて、突き刺さるんだよ。最初に威圧を掛ければ、巣から出てこなくなる〕

〔そうなんだ〕


 渡辺さんにも伝えて、座標をマップしておいてもらおう。

「渡辺さん。この辺り、危険な鳥が大量に襲ってくるようです。あらかじめ威圧しておけば巣から出てこなくなるとのことです。座標とか登録しておいた方が良いですよ」

「わかった、情報ありがとう。でも威圧ってどうやってやるんだい?」


 そう言われて、ふと考える。

「このやろうとか強く思えば、出る感じですかね」

「距離の離れた鳥を、脅せるような威圧? 別の方法を把握しないと危険だね。思いつくのは、閃光手榴弾(せんこうしゅりゅうだん)だが、効き目があるか逆に危険なんだろうか? 試してみないといけないが怖いね」

「そうですね、驚かすと襲ってきそうですものね」


 俺は気になって、リーゾに聞いてみる。

〔ほかにも、やばい所はあるのか?〕

〔ああ蜘蛛の巣や沼、地割れの深いのが在ったり色々ある〕

〔なるべく避けてくれ〕

〔わかった〕


 俺も気を抜かずに、周りへと意識を広げる。

 すると距離は置いているが、明らかに俺たちを囲み並走している奴らが視える。

〔おーいリーゾ。周りに数人、並走している奴らがいるぞ。誰か部下でもつけているのか?〕

〔いや俺は一人だが、どの辺りだ〕

〔周りを囲んでいる。きっちり5人だな。両サイドに2人ずつ後ろに一人〕

〔ちょっと話を聞いてみる〕

 そう言うと、いきなり飛び降りてしまった。


〔おい後ろにも車がいるんだぞ。無茶をするな〕

 と叫んだがもういない。

「ちょっと止まってください」

 渡辺さんにお願いをする。


「どうしたんだい? あれ、彼は何処へ行った」

「周りを囲んでいる人たちが居たので、見に行きました」

 そうなんだよ。

 リーゾって腰巻だけだから、下手に後ろを見ると、男として悲しくなるんだよ。

 だから途中、後ろは全く見ていない。


 少しすると、戻って来た。

〔どうだった?〕

〔ライモンドの部下たちだった。ああライモンドも四天王の一人だ。俊足の剣を極めし者だ。目的は、ちょっと見て来いと言われたそうだ〕

〔ああ俺たちの品定めか、襲ってこないならいい〕


「渡辺さん。お待たせしました。行きましょう。周りにいたのは他の四天王ライモンドという方の部下だそうです。俺たちを見に来たようですよ」

「そうですか。まあ襲っては、こないと言うことですね」

「多分ですけどね。魔王に会うための試練、とか言い出すと面倒ですよね」

「ああ、何か物語でありそうだね」

 渡辺さんにそう言われて、本当にないよなと考える。

 魔王様に会いたくば、この試練を受け、見事越えよ。なんてな。

 

〔その辺りから、少し右に行け。まっすぐ行くと蜘蛛たちが上と下から襲ってくる〕

「すいません、もっと右に進んでください。蜘蛛の群棲地帯が正面にあるそうです」

「わかった」


〔この辺の配置は魔王様の管理なのか?〕

 つい気になって聞いてみる。

〔当然そうだ。こっちには来なかったようだが、近くに質の悪い魔王たちが居てな、それの対策でもある〕

〔じゃあお願いすれば、外してもらえるかな?〕

〔それは会ってからの話だな。お前がやばいとなったら、もっときつくなるかもしれんぞ〕

〔あー、気に入られるように頑張ろうか〕

〔ああがんばれ。姑息な手段ではなく、正面から力を見せろ。魔王様に、こいつは何をしても勝てないと思わせれば、お前の勝ちだ〕

〔えっ? そっちのがんばれなのか〕

〔当然だろう〕

〔当然なのか?〕

 おもわず、苦笑いだ。


 当然その日の内には、到着できず。途中で宿泊をする。

 開けたところは、必ずトラップがあり通れず、くねくねと走るためスピードが上がらないためだ。

 どこから見ても、周りが木に囲まれ、見通せないように配置されている。

 すべて考えて、配置しているならすごいことだ。


 使っていいと言われたので、火を囲み談笑をして居ると、誰かが俺の意識範囲に入って来た。

〔リーゾ誰か来たぞ〕

〔あーん? この気配。やばい奴が来たな〕

〔やばい奴?〕

〔ああ。シャジャラ。四天王だ〕


 少しすると、闇の中から真っ赤なドレスを着た女の人が現れた。

〔こんばんわ。こんなところに居ると言うことは、到着は明日なのね〕

 そう言ったのは、身長170cmくらいありそうな超美人の女の人。

 まずドレスの開いた胸元に思わず目が行くが、印象的なのは額に控えめな10cmくらいの角が、上向きにきれいな曲線を描き生えている所だ。


〔あなたが、ゲストね〕

 そう言って、右手を伸ばしてくるので、

〔諏訪真司だ。よろしく頼む〕

 挨拶をしながら、右手を伸ばす。


 途中で、リーゾから

〔ばか、手を取るな〕

 と、声が聞こえたがもう遅い。


 俺の体から、何かが大量に吸われていく。

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