スプリンターペイン
門前払 勝無
第1話 ローからハイ!
容赦なく凍えさせる吹雪ー。
心までも凍り付くー。
荒々しい漆黒の渦にビル間の灯りは人工的な星空を創り上げていて俺を幻滅させる。
少し酔った目で世界の最前線に出てみて汚れた自分に吐き気がする。泥人形達が互いに生臭い泥をなすり付け合っていて俺はツツジの花壇にゲロを吐いた。
「お兄さん!飲みですか?おっぱいですか?」
白黒のデブが話し掛けてきた。
「いまゲロしてる」
「それ終わったら飲みですか?おっぱいですか?」
俺はデブを見上げると大仏様にみえた。
「おお!おお?こ、これがお導きというやつか!」
「そうです!子羊よ!汝、我に着いて来たまえ」
デブは俺に浮腫んだ手を差し出してきた。
「酒を少々とおっぱいを大盛りでお願い致します」
「よかろう…着いて参れ」
「ははぁ!!」
タバコを咥えながら高速道路下を歩くデブの後を着いた。
コオロギが鳴いて月が見下ろしている。サンタクロースが三人寝転がって一升瓶を片手にくだを巻いている。疲れたメイドが鼻水を垂らしながら天を仰いでいる。妖艶な狐と嘲笑う狸がじゃれ合う交差点。
俺は何も期待せずに魔王の城のエレベーターに乗り込んだ。細い鏡で希望を持たない顔を見た。
「最終電車にはまだ余裕がある。まだ命に余裕がある。」
エレベーターの扉が開いてタキシードを着たチビの道化がヘラヘラしながら待合室へ導き、俺はそれに着いていく、言われるがまま冷たいソファに座らされる。魔法の書に料金が書かれていた。
「なんでもござれよ」
「では、ハウスボトルはウィスキーでよろしいですね?」
「いいさ、それがお望みならな」
「かしこまりました」
俺は心の無いチビの目を流し見てタバコを咥えた。
やたら広くて深海のような薄暗さ、仄かに光るグラスが魅惑的な空間を演出している。
つづく
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