第185話 常夏の楽園には世界一の美少女が付き物
降り注ぐ太陽はこれでもかというくらいに浜辺を焦がす。ビーチサンダルがなければ火傷してしまうかのような熱を持っている。
嘘くらいに晴れ渡る空に、天空の城でも隠れているのではないかと思えるくらいに莫大な夏の雲が見える。
その空のした、ザザァァァと波を立てて、風と共に潮の香りをこちらまで運んで来てくれる。
壮大な北陸の海。
水平線の彼方まで見える鮮やかなコバルトブルーの海は、ダイヤモンドでも沈んでいるのではないかと錯覚するほど、水面がキラキラと光って見える。
「めっちゃ良い場所」
浜辺にはまだ人の数はまばらであった。
早朝、5時起きからの始発新幹線に乗ってやって来た北陸の海。
専属メイドのおかげで早起きには慣れているが、移動疲れがちょっぴり出てしまい、欠伸を何発か、かましてしまったが、海を目の前にすると眠気なんてどこかに吹き飛んだ。
海に着いて、俺の方が早く着替えが済むことだろうと思っていたが、案の定である。
ま、俺ら男子は海パンをはくだけだからね。俺はプラスして流行りのラッシュガードをしているが、これも羽織るだけ。
女の子の方が着替えに時間がかかるのは当然なので、場所取りもかねて先に浜辺にやって来た次第だ。
夏休みの海なので混雑が予想されたが、そこまで混んではいなかった。
親子連れ、カップル等が見えるが、混雑というレベルではない。
なので、向こうからこちらに歩いてくる、芸能人も裸足で逃げ出しそうな美貌の銀髪美少女はかなり目立っている。
「晃くん。お待たせしました」
言葉にならなかった。
一生綺麗な長い銀髪。妖精のように儚くも透き通るような肌がビキニ姿だと、余計に綺麗に映る。スタイル抜群の身体が、水着でやけに強調される。
まさかビキニだとは思いもしなかった。有希のことだ、もう少し露出を抑えた水着をチョイスするかと思った。
ただ、アメジスト色のビキニは大人っぽい彼女を更にセクシーに彩っていた。
まさか、有希がパープル色の水着を着るなんて思ってもいなかったので、そのギャップと婉容な姿にノックアウト。
好きいいいいいいい!
と叫びそうになるが、衝撃的過ぎて大声が出ない。
「あ、あの……。そんなに見られると、恥ずかしい、ですよ……」
こんなにも大人っぽく、色っぽいのに、恥じらいを持ち合わせてるなんて、どんだけ俺の性癖をえぐってくるのだろうか。
「え、ええっと、晃くん? 似合ってませんでしたか?」
そんなことは全くない。
遠目でも、親子連れのパパやら、カップルの彼氏が有希の姿に見惚れて、奥さんや彼女さんに殴られているのが見える。
この海で、いや、この世で1番美しいといっても盛ってないと言えるほど似合っているのだ。
でもさ、でも、こんなに綺麗が振り切ったら、もう、なんて言えば良いかわかんねぇ。
しかし、上目遣いで不安そうに見つめてくる有希へ、なにか言ってあげないといけないと思い、なんとか自分を奮い立たせて言葉を発した。
「世界で一番綺麗だよ」
なんともまぁ自分を奮い立たせたわりに出た言葉は、やっすくて、くっさい、そこら辺に転がってそうなセリフだった。
もっと気の利いた感想言えよ。
と反省していると、真夏の太陽よりも眩しい満面の笑みを輝かせてくれる。
「嬉しい」
有希は犬みたいに自分の尻尾を見るみたく、自分の身体を見て回る。
「あまりこういう色やデザインは買わないのですが、ちょっと冒険してみました」
「冒険大成功だな」
「晃くんはこういうのが好きなんです?」
「まぁ……」
「えっち、ですね」
「いや、そのだな……」
「ふふ。そんな、えっちな晃くんも大好きですから、別に良いですよ」
あー。俺はこの子の尻に敷かれ続けるのだろうなぁ。専属メイドの尻に敷かれて幸せなこと、この上ない。
「晃くんは……」
ジーッとこちらを品定めするかのように見てくる。なんだか、センスをテストされているみたいで、ちょっぴ緊張する。
「だめですね」
「だめなの?」
ガーンと、効果音が鳴った気がする。
「これは、めっ、対象ですね」
「そんなにだめ?」
「だめです」
言いながら、俺のラッシュガードを脱がしてくる。
すると、上半身が剥き出しになり、有希の鼻息が少し荒くなる。
「はい♡ 百点満点あげます」
言うと、ギュッと俺に抱きついてくる。
ビキニなので、ほとんど裸で抱きついているのも同義。彼女の体温が直接伝わってくる。
「有希さん?」
「なんです? 晃くん」
「きみ、筋肉フェチだもんね」
センスをダメだしされたと思ってショックだったが、この子、ただの筋肉フェチなだけだったわ。
「違いますもん」
「ほんとに?」
「私、晃くんフェチです♡」
「あの、そんなこと言われると、有希を堪能しちゃうぞ」
「改めて言われると恥ずかしいですけど……堪能しちゃってください♡」
なんですか、ここは、常夏の楽園ですか?
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