第3話

「もしかして⋯花子ちゃんかも⋯」

「花子ちゃんって誰ですか⋯?」私が聞くと、森川先生が話しはじめた。

「私ね、この学校の卒業生なの。15年前の。私のクラスに佐倉花子ちゃんっていう子がいてね。いつもみつあみをしていた子だったの。いつも休み時間に1人で本を読んでいる私に話しかけてくれて、気がつけば友達になってた。そして3月になって卒業が近づき、花子ちゃんは私に『中学校、いっしょに行こうね!!』といつも言っていたの。なのに、なのに⋯。卒業式の5日前、交通事故にあってしまって⋯。いっしょに卒業して、いっしょに中学生になれることはなかった。」

「だから、他の人が卒業するのがうらやましくて、卒業式をさせないようにじゃまをしていたんじゃないかしら。」⋯そんなことがあったんだ。「じゃあ、桜の木の周りの土が青むらさき色になったのも花子ちゃんのしわざだったってことですか?」「うん。桜を見ると、思い出しちゃうのかもしれないね。」「でも私、桜がなくなるのは、いやです!森川先生、花子ちゃんと話しましょう!」私はこのままじゃいやだった。幸せな卒業式のために桜を切るなんて考えられなかった。私達も、花子ちゃんも、感動するような最高の卒業式にしたかった。「すみれちゃん。いっしょに体育館に行きましょう!

私は森川先生と体育館へ向かった。体育館はやはりむらさき色のきりで包まれていた。でも、私と先生は気にすることもなく、叫んだ。「花子ちゃん、出てきて!話したいことがあるの!」「お願い!」それでも花子ちゃんは姿を現さなかった。先生が、「花子ちゃん!私、森川由紀だよ!15年前の約束覚えてる?」そう言うと、花子ちゃんが目の前に姿を現した。『由紀⋯ちゃん?』「そう、由紀だよ!もう、卒業式をじゃまするのはやめよう!」花子ちゃんは、大人になった森川先生におどろいているようだ。でも、すぐに表情が変わり、『由紀ちゃんなんかに私の何が分かるの!?』と言った。

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