スイーツ戦隊メルトデンジャー

彩香音

プロローグ

 青く澄み渡る天空に小さな島が浮かんでいた。厚い雲海に隠れるようにして存在するのは、人間たちが決して見ることのできない、妖精の国のうちのひとつ―――お菓子の国だ。

 いつもなら美しい色とりどりの花が咲き乱れ、仲良く並ぶ可愛い家々から、うららかな妖精たちの声が聞こえてくる。

 動物のぬいぐるみのような愛らしい見た目をした妖精たちは、みんな陽気で幸せに暮らしていた。

 しかし、今は国全体に重い空気が垂れ込め、花は元気をなくし、静けさに包まれている。妖精たちの顔からは生気が失われていた。

「これは、いったいどうしてしまったのじゃろうな……」

「まったく見当もつきませんわねぇ」

 国の中央にある荘厳な石造りの城では、玉座に座る王が頭を抱えていた。隣にいる王妃も頬を押さえて困ったような表情を見せている。

 彼らの目の前には、彼の一人娘であるこの国の姫君がいた。

「お父様、お母様。ここはわたくしにお任せください! 人間界に赴いて、問題の原因を突き止め、見事解決してみせますわ」

 姫君が胸を叩いて宣言すると、王は狼狽えた。

「ハッピー、そなたの心意気はありがたい。しかし、可愛い娘をたった一人で人間界へ行かせるわけにはいかないのじゃ」

「ですが、お父様とお母様が城を空ける訳にもいきませんでしょう? それに、もうこの国で動ける者はわずかです。その中でまともに魔力を操れるのは王族であるわたくしのみ。わたくしが行かずに、他の誰か行くと言うのですか?」

「むむむ……、確かにそうじゃなあ」

「あなた、ここはハッピーに任せてみましょう」

 ずいぶん悩んでいたようだが、王妃に言われて王は諦めたように溜息をついた。

「ではハッピー、そなたに任せよう。ただ、聡明なそなたならわかっているじゃろうが、儂らは人間界では思う存分に力を発揮することはできない。そこで提案じゃ。人間界でともに戦ってくれる仲間を見つけなさい」

「仲間、ですの?」

 王の言葉に、姫君は首を傾げる。

「そうじゃ。そなたは昔から一人で頑張る癖があるからの。必要とあらば、素質のある善良な人間に助けを乞いなさい。それが解決への近道になるじゃろう」

「わかりましたわ! では行ってまいります!」

 姫君は威勢よくうなずくと、王たちに心配そうな顔で見送られて、城を飛び出していった。

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