第1話
「おぎゃあー!!」
「元気な男の子ですよ!!」
「産まれてくれてありがとう。智。」
赤ん坊の俺をお母さんは愛おしそうに見つめた。
「智〜!おいで〜!!」
3歳になった俺は姉ちゃんの元へ慣れない足を使いながら行く。
「ねぇーねぇー!」
「きゃー!可愛い!!」
俺は姉ちゃんと発音よく言えなくて少ししかめっ面をしていた。すると姉ちゃんは俺のほっぺをつかみ
「智は本当に可愛いねぇ!!」
いきなり抱っこされこのクソ暑い7月。俺は汗をかきながら黙って姉ちゃんの腕に抱かれていた。
「2人ともー!ご飯よー!」
とお母さんは俺たちを呼ぶとそこには
「今日はしゃぶしゃぶよー!」
と野菜がクタクタになっていた鍋があった。さすがに離乳食から段々と卒業できるくらいだが、お母さんが膵臓癌で魚の油や肉の油など油物が食べられなく、野菜も柔らかいものしか食べれないと言っている。だけどさすがにこれは……。姉ちゃんはなにも気にせず食べているが、俺は3歳ながらも呆れてしまいその日はあまりご飯を食べれなかった。
「うわーん!!」
俺は自室の部屋で夜泣きしてしまい、お母さんは体調が悪くなってしまい、ベットに横たわっていて、姉ちゃんは熟睡。誰も来なく、悪化するばかり。その時ドアからキィッという音が
「おぉ。智、どうした?」
とタバコの匂いが服にまとわりついた父さんがいた。しかし父さんはいつも夜勤でご飯を共にする時間、話す時間もなく俺の当時の認識はたまにくるおじさんという程度だった。父さんはあやし方もわからなくオドオドしていて、ただ俺が泣き疲れて寝るまでお腹をポンポンとリズム良く叩くだけだ。しばらくすると俺は泣き疲れて寝てしまった。俺の知らない間でお父さんとお母さんがケンカをしていた。
「なんで泣き止ませないんだよ!!」
「私だって具合が悪かったの!!」
「具合が悪くてもこどものほうが優先だろ!?」
「ならあなたが全てやってよ!!」
「俺はアイツらの幸せのために働いてんだよ!」
「あぁ、こんなことになるなら結婚するんじゃなかったわ!」
「お前……!あの子たちのことそんなふうに思ってるのか!?」
「あぁ……もうはやく残りの家事やってよ。」
「は?俺は疲れて帰ってきてるし、今日はたまたま朝からだったけどもう夜遅いし、夜勤に備えさせてくれよ!」
「あなた仕事仕事って!あとあなたタバコやめてよね!臭いわ!」
「俺にだって息抜きが必要なんだよ!」
「私はあなたのために言ってるの!」
「……はいはいそーですか。」
「そうよ。あなたは私の言うこと聞いてればいいの。ったく、仕事のストレスで胃癌なんかになって……入院と手術でお金が少ないわ……」
「しょうがないだろ。」
「もっと働いてよね!」
矛盾と虫酸が走る。俺はこんな親の元に産まれてしまった。なぜ姉ちゃんはおかしいと思わないのか?
そんなことを知らない俺はぐっすり寝て夢の中にいた。
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