海の体温、君の温度

第10話 おとうさん

　『こんにちは、夏樹くん』

　『ほーら、夏樹。こんにちはって大樹さんに挨拶は？』

　『初めまして。金原大樹って言います』

　『あ、大樹の樹は夏樹くんの樹と同じだよ』

　『……こ』

　『こん、にちは……』

　『うん、これからよろしくね』

　『ねえ』

　『うん？どうしたんだい、夏樹くん』

　『なんでおじちゃんがおとうさんなの？』

　『えっ？』

　『だって、おじちゃんはおとうさんじゃないよ？』

　『ああ、うーん。そうだなぁ』

　『夏樹くんのお母さんのことを、ずっと守るから一緒に居させてくださいって神様にお願いをしたんだ』

　『かみさま？』

　『うん、そうだよ。そしてお願いを聞いてもらった神様の前で、二人はずっと一緒に居ますって約束をしたんだ』

　『そうするとぼくのおとうさんになるの？』

　『うん、まぁ……そう、だね！』

　『あ、そっか』

　『夏樹くんにはお願いしてなかったね』

　『おねがいって？』

　『夏樹くんのお父さんにならせてくださいって』

　『かみさまのまえでやくそく？』

　『えーと、そうだね。神様は今ここには居ないけど、約束したいんだ』

　『ずっと夏樹くんを守るからどうか一緒に居させてください、って』

　『ふーん』

　『いいかな？』

　『うん！いいよ！』

　『ずーっと！いっしょにいてあげるね！』

　『本当？ありがとう！』

　『うん！おとうさん！』

　『っ！』

　『あれー？なんでないてるの、おとうさん』

　『いや……ちょっとね……』

　『どこかいたいの？』

　『ううん……！』

　『何でもない……何でもないよ』

　『夏樹』