第27話 手がかり

 うぉーいっ!


 「待て待て待てぇーいっ! お前、いまなんつったーっ?」


 よっこらせっと羽有りトカゲの背に乗ろうと硬い鱗を掴んで片足をその背に乗せたところで、俺はひっくり返りそうになった。


 「はぁー?いきなりどうしたんじゃ?」


 なっ何を暢気な…

 羽有りトカゲの背を蹴り飛ばしたくなる衝動を抑え、もう一度ちゃんと声に出して聞き返す。


 「だ・か・ら・、お前はいまボソッとさりげなく、何を言ったんだって聞いてんだよ!」


 「ん? お前がまたここに来た理由を聞いたことか?」


 空耳ではなかった。

 もはや羽有りトカゲの背に乗って飛んでいる場合ではない。

 俺は羽有りトカゲに乗っけた右足を下ろし、羽有りトカゲの顔の前に移動した。

 

 「そうだ! 俺は以前ここに来たことがあるんだな?」


 「何を言っておるんじゃ? 二年位前にお前はこの森を駆け抜けて行ってたじゃないか。乗らんのか?」





 「たしか夏だったよな?」


 「そうだな、あれは夏の初めころだったな。髪を伸ばしとるから、お前に気づくのが遅れてしもうたがなっ。あの時はケガをしてるようじゃったが、元気になってよかったな」


 コシロー、お前はここを通ってあの丘へたどり着いたんだな。

 あの時来てた麻生地のようなものでできたパジャマ服の背中が破れていたのは、お前が背中を怪我してたからなのか?

 ようやく、やっと俺に出会う前のコシローに出会えた!


 「なぁ、よく覚えてないんだが、あの時俺はどっちからどっちへ駆けてた?」


 「なんじゃ、覚えておらんのか。うーんとたしか…、お前はここからだと、北西の方向から駆け込んできて東へ抜けていってたぞ。我だからお前に気づけたが、ほかの魔物たちはお前に気づけておらなんだようじゃったぞ」


 北西か…。この森の北西方向にコシローはいたのか?

 そこにコシローの過去があるのか。

 ここに来て、この森に来て正解だった…

 この森を選んだ俺の選択は間違えてなかった!

 コシローよ、俺は確実にお前に近づいてるぞ!!


 …で、ところで魔物に気づかせないでこの森を駆け抜けた…?


 「どういうことだ? どうしてほかの魔物たちは俺に気づかなかったんだ?」


 「はぁー? 何を意っとんじゃお前は。お前が使っとった魔法じゃろうに! 我は光を加減できるから、我にはお前の姿は見えとっただけじゃ。光を加減できる魔物は、ここには我しかおらん。光を加減できん魔物にはお前が見えんかっただけじゃ」


 光を加減?

 コシローは光を加減して姿を見えにくくするような魔法を使ってた…。

 俺にも使えるんだろうか?

 いや、コシローが使えてたんなら、今の俺でも使えるはずだよなっ。

 しかし、いったいどうすれば光を加減する魔法を発動できるんだろうか…?

 さっぱりわからん。

 わからんことはわかる奴に聞こう!


 「お前はどうやって光を加減してるんだ? お前のやり方を教えてくれ」


 「ん? んなことは、たぶんお前と同じじゃぞ。光はただの色じゃろ。色を消せば光を消せる。お前もよく知っておることじゃろ」


 ふむっ、光は色。色を消す…

 色のない世界。そこには赤も青も黄色も緑もない、黒も白もない…、そんな世界なのか?

 想像できん、そんな世界!


 うーん、参ったな…。

 光を消す方法も、当然姿を消す方法もさっぱりわからん。

 

 今すぐ姿を消す方法を習得したいけど、原理がわからんから全くイメージできん。


 これは時間がかかるなぁ、長期戦覚悟かぁ。

 でもなぁ姿を消せれば、このトカゲ以外には見つけられなくなるんだよなぁ。

 それって、透明魔法っていうか隠密魔法ていうのか、そういうのと同じだよなぁ。

 そんなことができれば、俺は相手に悟られず、相手の持つ情報を探れるし倒すこともできるだろうし…。

 コシローにできて俺にできないはずはないよな。

 俺たちは、一心いや、二心同体なんだからな。


 「なぁ、一つ相談なんだが…」


 「何じゃ改まりよって」


 「あのな、俺にお前の光魔法を教えてほしいんだ。頼む、何も聞かずに教えてくれ」


 光魔法を教えてくれと羽有りトカゲへ頭を下げた。

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