第33話 三人仲良く


「ただいまーーってまだ魔王様寝てたんだ」


「お帰りマーシャ。まだ起きそうにもないわ」


「あんまり寝てたら夜寝れなくなっちゃうよ!」


「それくらい平気でしょ。それよりお腹すかない?」


「たくさん歩いたのですごくお腹すいてます!」


「マーシャは誰かと違って正直ね、今適当に作るからちょっと待ってなさい」


 マリーが外に出たのを確認してから起き上がる。


「あー……寝てたはずなのに疲れてる。それになんだか気分もよくない」


「おはようございます、私が看病してあげましょうか?」


「大丈夫だ自分の面倒くらい見れる。それよりマーシャはどこに行ってたんだ?」


 寝起きで頭が回らない。

 それでも彼女のことが心配できく。


「私はリックと会ってました。魔王様は今お時間大丈夫ですか?」


「改まってどうした、そんな重い話でもしていたのか」


 まさかリックのところに戻りたいとかいうんじゃないだろうな?

 マーシャの顔を見てただ事ではないと感じる。


「そこそこ重い話です。それでも聞いてくれますか?」


「当たり前だ」


「勇者たちが魔王様の討伐に向かっているそうです」


「そんなことか、それじゃあ適当な場所で迎え撃つし……」


「討伐前にシュリアを消し去るとも言ってたそうです。時間も日付もわからないのですが、勇者たちと共に行動している魔術教のスパイが言っていたそうなので間違いないそうです」


「……つまり明日きてもおかしくないわけか。いや、今日の夜仕掛けてきても不自然ではないな」


「少なくともあと二日はかかると思いますよ。昨日アルマルク城から出発したそうなのですが、そこからシュリアまでは移動魔法無しでどんなに早くとも三日はかかってしまいますから」


「油断は禁物だ、仮に今日の朝出発していたと仮定しよう。そしたら明後日の早朝に到達していてもおかしくない。相手は勇者だ、何をしてくるかわかったものじゃない」


「それじゃあ明日でもうお別れになっちゃうんですか?」


「お別れというものはもう会えないことを言うんだ。俺たちは違うだろう? 勇者を倒したらすぐに戻ってくるからな」


 彼女の頭をわしわしする。


「えへへっ、私ちゃんと伝えられた」


 俺だけでなくこの村も巻き込んでくるとは……。

 この村を消し去ったらそれは勇者じゃなくてただの悪党になるのでは?

 勇者たちは俺に攻め込んできたときは三人だった、全員物理攻撃者。

 それに魔術教からのスパイが加わるとして四人以上ってことになるか。


「まてよ、魔術教?」


 マーシャはなぜこの名前を知っているのだ?

 もしかして彼女も魔術師なのか……。


「じろじろ見てどうしたんですか魔王様、もしかして私に何かついてます?」


「少し考え事をしていただけだ」


 彼女がどうであろうと関係ないじゃないか、それよりも優先するのはこの村をどうやって守るかだ。

 監視に十分な兵を雇うのは予算的に難しい、仮にユストから援軍を出して死亡したら反乱でも起こされかけない。


「マーシャご飯できたわよ」


「はーい、今行きます! 魔王様はお腹すきませんか?」


「今はそんな気分になれない、すまないが二人だけで食べてくれ」


「わかりました、それじゃあ行ってきます」


 マーシャが出て行った。

 そして自分の決意をつぶやく。


「俺が村の前で待ち続ける」


 村人一人でもおとりにすれば俺は楽をできるだろうが誰かを犠牲にするなんてあってはならない、特に勇者相手の場合には。


「さーて、明日やることは決まった。できるだけこちらに有利に働く場所で、なおかつ村からのアクセスがいい場所にしよう」


「さっきから何ぶつぶつ言ってるのよ」


「マリー聞いていたのか」


「……その話本当なんでしょうね?」


「いつからそこに。どこから聞いていたのかがわからないが、勇者がこの村を消し去ろうとしていることは事実だ。まあそんなことさせるわけないがな」


「あなたに防げるの?」


「できるかどうかじゃないだろ、やらないといけないことなのだから」


「このことは村の人たちには伝えるの?」


「そのまま伝えたら混乱を招く、だから混乱しない程度に言葉を濁して伝える」


 勝負は戦う前につく、相手のことを村の外で発見できれば俺の勝利は確定だ。

 村の中に侵入されたら俺の負け。


「マリーちゃんいないと思てたらやっぱりここにいた! お皿洗っておいたよ」


「ありがとうマーシャ」


 二人とも数日のお別れをしなくちゃいけないのか。

 ちょっと寂しい……わけではないな、不安だ。

 あの二人がちゃんと生活できるのかがわからないし!


「なあ、今日は三人で寝ないか?」


「魔王様今日はたくさん寝ますね」


「……私は別に構わない、というよりいつも一緒に寝てるじゃない」


「それもそうだな、すまない」

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