第32話 マリーと魔王が……
いつも通り、町から離れたところまできてから話を始める。
何でこんなことをするのかはわからないが、キャムはあまり人に見られたくないらしい。
恥ずかしがりやということなのだろう。
「それで、最近何かあったかい?」
「うんとね、魔王様がシュリアの村長になってそのお手伝いしてたよ! あと今日はユストの町に行ってきたんだ」
「ユストか……最近行けていないし、いつかまた行きたいな」
「シュリアの三倍くらい発展してたんだ。そこで悪い人たちがいたんだけど、魔王様が倒しちゃったの! でもそのあとにお酒を飲んで酔っ払って寝ちゃった!」
「マーシャは魔王の話になると、すっごく楽しそうに教えてくれるよね。なんだかこっちまで明るい気持ちになれるよ」
「そうかな? うれしい!」
こんな笑顔を見せられたんじゃ、今日話したかったことを任せられるかどうか……。
魔王への伝言を頼みたかったのだが、こんな笑顔を見せられたんじゃ言いにくい。
「リックも私に言いたいことがあるんじゃない?」
「ばれたか。実は魔王に伝言を頼みたいんだ」
「そんなのすぐにできるよ。どんなことを伝えればいいの?」
「勇者たちがシュリアに向かっているんだ。目的は魔王を討伐するため。ただその前にシュリアを消し去ると言っていた。と伝えてくれ」
「え、この町なくなっちゃうの?!」
「私もそんなことにはなってほしくない。だから魔王にこれを伝えておいてくれ。早めに手を打てばなんとかなるかもしれない」
「わかった、ちゃんと伝える!」
こんなに重い役割を彼女に任せてもよかったのだろうか。
せめて手紙にでもしてそれを渡してもらったほうが彼女の笑顔を守れたかもしれない。
いつもの無邪気な笑顔から頑張って作っている笑顔に変わってしまった。
「ごめんマーシャ」
「なんで謝ってるの?」
「だってあなたにはあまりにも重いことを任せてしまったし」
「教えてくれてありがとうキャム、もし言ってくれなかったら魔王様は対策できずにこの村は本当になくなっていたかもしれない。でも、教えてくれたおかげで防げるもん」
「まだ確定なわけじゃ」
「魔王様が失敗するわけないでしょ、あの人に任せれば大丈夫だから!」
「やっぱり君のことを選んで正解だった」
「そうでしょ、私に任せなさい!」
そのころのマリーと魔王は……。
「マーシャが行ってしばらくたったし、そろそろいいかな? ずっと見てみたかったんだ!」
魔王がまだ起きなさそうなことを確認してから彼の服を脱がす。
すごい……硬い。
思わず触ってしまった。
「あんまり長い時間やったら起きちゃうかもしれないし、早く終わらせないと」
私もこんな感じでムキムキになれればいいのになぁ。
魔術師だからと言って魔術だけできていればいいわけではない。
「肺活量だとか体力だとかも大切だし。私もいつかこんなふうになりたいな」
「…………?!」
魔術を使ってベッドで横になったところまでは覚えている。
でもマリーに腹を触られている理由が全く分からない!
それにマーシャの姿も見当たらないし、なにがどうなっているんだ!
「魔王のこれ大好き」
マリーは触るのに夢中で俺の目が開いていることにはまったく気づいていないようだった。
まあ気分の悪いものではないし、しばらくはこのままでいいか。
……ってなるわけないよな。
「マリー、どうして俺は上半身裸になっているんだ?」
「いつから起きてたの?!」
「ちょっと前からだ。なんかくすぐったいから起きてみたら、こんなことになっててびっくりしたよ」
「ちょっと筋肉が気になっちゃって。だって私……」
そういってマリーは俺から離れた。
何をするのかと思えば、今度は自分の服に手をかけているではないか。
「おいおい、いきなりどうした?!」
「どうして私から目を離すのよ」
マーシャの時はまだ風呂だから見れた。
しかしここは寝室だ、風呂ではないし裸になる場所……でもおかしくはないのか?
「いきなり服を脱ぐほうがおかしいだろ、……マーシャよりきれいな肌だな」
チラ見するだけのつもりだったが、予想以上にきれいな肌で思わず声に出てしまう。
「ありがと、でも私もちょっとは筋肉とかつけたいんだよね。魔王みたいに」
そう言われて自分の姿を見てみる。
最近動いていたせいか、以前よりもごつごつしている。
「別にそんなにいいことではないだろ、それよりもうわかったからもう服を着てくれないか」
「せっかくなんだから、ちょっとくらい……しない?」
「俺がうなずくとでも思っているのか?」
マリーが頭を縦に振る。
いやいや、俺ってそんなふうに思われていたのか?
「だめ……?」
「何回言われようとも駄目なものはだめだ。大体俺たちはまだそんな関係じゃないだろう」
「でも私は魔王の体を触ったのよ。私のも触ってもらわないと不公平じゃない?」
「別にいいさ、不公平だって。それじゃあ俺は寝るから」
マリーと二人っきりになれることなんてほとんどなかったし、もう少し話していたかった。
ただ睡魔がまだ強すぎたのでそれに従うことしかできなかった。
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