楠ノ木彩姫は可愛いと言わせたい。

ひなみ

はじまり。

静かなる宣戦布告

 私は可愛い。

 大きな目に長い睫毛、小さな鼻に艶やかな唇。流れるようなロングヘアに、すらっとした手足。

 胸は……これからの予定。

 鏡に映った凛とした気高い立ち姿はやっぱり様になっている。

 男子には日替わりで告白されている。

 学園祭のコンテストでは満場一致の一位で優勝もした。

 勉強も学年の上位で生徒会にも在籍している。

 完全無欠で完璧なこの楠ノ木彩姫くすのきあやひの美貌に振り返らない人間なんているはずがない。


 たった一人を除いて。


 前の席の岡部おかべ君は、噂では草すら食べない絶食系男子と言われている。

 それどころか女の人に興味がないとか、挙句の果てに同性愛者だなんて声もある。

 確かに彼は何を考えているのかわからないところはある。

 けれど、そんな事私には関係ない。

 私を見て「可愛い」と。

 たったその一言だけを勝ち取ってみせる。


 これは、彼からの楠ノ木彩姫への無言の挑戦状なのだから。

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