第19話 ホープフルステークス参戦


《フラッシュフォワードの新馬戦の上がり3ハロン29.9!!》》


レースラップを測っていた競馬関係者が驚いて大声をだしてしまっい、周りの人間たちがその数字にビックリした。


「29秒ってマジかよ!」


驚くのも無理はない、従来の上がり3ハロンの最速は2022年にリバティアイランドが出した31.4が日本レース史上の最速、それを一気に1.5秒も更新したのだ。

しかも3ハロンの上位の記録の殆どは新潟のレースで短距離レース。この馬が本日繰り出した末脚がどれほど異質だったかが数字でも証明されたのだ。

その記録を耳にした祐一には更なる興味が湧いていた。


「では風切くんの馬の最後の1ハロンのタイムは?」


ラップを測っていた競馬関係者に祐一が聞いた。


「あ…はい。」


突然の有名調教師からの質問に動揺しながら男は答えた。


「信じられないんですが、10.9、10秒ときて最後が9秒ジャストです。」


「9秒だって?!!!」


衝撃の数字にふたたび驚いた。


「しかしそうじゃなきゃあの差は縮まらないか…」


ボーゼンと立ち尽くす祐一…

一方当事者の祐翠たち。


「春馬の馬の最後の追い込みにはビビったぜ。ウサインボルトが追っかけてきたと思ったもん。」


「いや、馬はボルトより速ぇから!」


祐翠の天然に小和田がツッコんだ。


このレースの勝利で祐翠は今年の71勝目。新人最多勝利まであと20勝。

その後、第7レースで風切も初勝利をあげた。


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皐月賞馬とダービー馬が凱旋門賞に出走して、空き巣となった3歳クラシック最終戦の菊花賞や古馬レースも春競馬の主役だったメダリストとダブルボンドが凱旋門賞の疲れから出走しない為、主役不在の秋競馬が続いていた。


そうなると衝撃のレースをしたサイレンススタートとフラッシュフォワードの次走が注目されだした。


サイレンススタートの次走は新馬戦から1ヶ月後、東京1800mで行われるG2レースの【東京スポーツ杯2ステークス】

早くから東京競馬場を経験させて来年の日本ダービーを目指す馬が選択することの多いこのレース。


注目されたサイレンススタートはここでも1倍台のダントツ人気。

新馬戦ではハナ差の勝利だったが、フラッシュフォワードの居ない通常の2歳のレースなら例え王道のG2レースでもこの馬の敵はいなかった。


ハイペースで逃げて直線ではここでも逃げながら伸びる規格外のレース運びで、2着馬には8馬身の差をつけてのゴール。


3頭目の無敗の3冠馬のコントレイルが同じ東京スポーツ杯2歳Sで記録した1分44秒5の2歳レコードをコンマ4秒更新するレコード勝利。

最後には競ってくる馬もいなかった為に全力の追いでなかったのにこの記録、この馬は間違いなく本物だ。


競馬好きたちは胸が震えていた。


しかしもう一頭の主役候補のフラッシュフォワードは新馬戦の疲労が抜けない為、次走未定のまま時間だけが過ぎていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


暮れの2歳牡馬の2つのG1レースの1つ【朝日杯フューチャリティーステークス】の1週前。


競馬関係者A

「結局フラッシュフォワードは未勝利戦も出ないまま今年は終わりかな」


競馬関係者B

「かもしれませんね、まあとりあえず今週は他の2歳馬の話をしましょうよ」



サイレンススタートの3走目は、G1の朝日杯かホープフルステークスのどちらに出走するか注目が集まっていたが、陣営の判断は距離を短縮するまさかの朝日杯を選択したのだ。


これには競馬界は驚いた。


3歳のクラシックを目指すなら普通はホープフルステークスを選択する、しかも昨年は海外馬のアブソルート産駒ヴァンガードに勝利をかっさられ今年もアブソルート産駒の参加が表明されているホープフルステークスにはサイレンススタートが打ち負かすことを期待するものは多かった。


ーー逃げたのか福山厩舎とサイレンススタートは?!ーー



そういう論調が多かった為、朝日杯を勝利したサイレンススタートに祝福する声は少なかった。


しかも勝ちタイムも平均で、今までのハイパフォーマンスに比べると物足りないレースに白けムードになっていた。


そんな空気がレース後の祐一調教師のコメントで一変する。

何と同馬は来週のホープフルステークスの出走を発表したのだ!

朝日杯とホープフルステークスの連戦?!

競馬界に衝撃が走った。



ゲームじゃないんだぞふざけるなという反対意見と、今までにないローテーションにワクワクするもので対立していた。


「サイレンススタートは並の馬じゃありません。ホープフルステークスは期待していて下さい。」祐一はインタビューで高らかにコメントする。

それはサイレンススタートへの絶対の自信だった。



そんなサイレンススタートとホープフルステークスでライバル視される馬は、新馬戦、デイリー杯、京都2歳とここまで3戦3勝の【テクノブレイク】


アブソルート産駒の今年の刺客で、今年こそ日本のダービーを取るべく、アブソルート産駒を所有するオーナーたちが秘密裏に手を組んだチームアブソルート。


その中からかなり成長が早く、より有望株なこの馬が送り込まれたのだ。



今年のアブソルート産駒も昨年同様順調で勝ち上がり率10割を未だに更新中。昨年の馬は全て重賞ウィナーになっている。


テクノブレイク騎乗予定のヨミ騎手。

「テクノブレイクは昨年凱旋門賞2着3着のザルカバードやシーズンスターズにも負けないぜ!その2頭に乗ったことないけどな。」


注目のホープフルステークスしかし祐翠にはその前に大仕事が待っていた。暮れの大レース【有馬記念】


このレースに凱旋門賞ぶりにシルバーグレイトが参戦する。


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