第14話 伝説の新馬戦
日曜日メインレースに3歳最後のクラシックレース菊花賞を控えた京都5Rの新馬戦!
過去には2008年に勝ち馬のアンライバルドがのちに皐月賞を制し、2着のリーチザクラウンがダービーで2着、3着のブエナビスタがG1を6つも取ち更に4着のスリーロールスが菊花賞を制したことから伝説の新馬戦と呼ばれるようになり、各陣営が期待の馬たちをデビューさせることが増えた同レース。
今年も各大物調教師の期待馬たちが出走を表明するも1頭の馬が頭1つ抜きん出た評価をされていた。
サイレンススズカの再来サイレンススタートは直前の追い切りでも菊花賞出走予定の3歳馬に競り勝っていたことからダントツの人気をされていた。
当日には1倍台中盤まで落ち着いたが、前日オッズでは1.0倍を記録するなど大口の投票があったもよう。
祐一がレース前の指示を祐翠にしていた。
「この馬はスタートも問題がないが、新馬戦では逃げない競馬をしてくれ」
福山祐一調教師は自身が騎手だったころから逃げると次走我慢が効かなくなるということから、特に新馬戦では逃げることをひどく嫌っていた。
「まあ出たなりにレースするよ」
他馬の情報を念入りに調べてレース前に念入りにシュミレーションしていた祐一と違い、祐翠は感覚で走らせるジャッキーだった。
「新馬戦で情報は少ないが、準備不足でレースに臨むことは許さんぞ」
勝てば問題ないでしょと言わんばかりの態度で父の言葉を聞いている祐翠。
「祐翠くんと春馬くんの勝負か…緊張するなぁ」
2人の同期の珍念がお互いの馬にまたがっている姿を見て珍念はドキドキしていた。
「珍念お前、たかが新馬戦に同期が2人出てるだけで心配してたらキリないぞ」
珍念に話しかけたその男の名は小和田。彼らと同じ新人騎手でここまで22勝と同期で2番目に勝ち鞍を重ねていた。
「小和田くん!そうだけどここまでの春馬くんの苦労を考えたら少しね…」
「まあ気持ちは分かるけどな…」
デビュー前に大怪我をして本日ようやくデビューを迎える風切の姿を見て2人は少し感情的になっていた。
「でも残念だけど、風切の馬じゃ各陣営の期待馬を出走させてるこのレースじゃ好走は難しいと思うけどな。」
返し馬の最中に風切に祐翠が声をかける。
「おーい!春馬ー!!調子はどうだい?!」
声をかけられた風切が馬を止めて答える。
「ん?」
「俺と馬のどっちの調子の質問か分からないが、どっちも絶好調だよ!」
「へーさすがー春馬!」
競馬学校時代からライバルだった2人で、2人はお互いを認め合っていたが、ここまでの2人にはかなりの差がついている。
偉大な叔父と父の子で話題性もあり、その父の厩舎で有力な馬に乗せてもらえることも多い祐翠は1年目にダービーを制して凱旋門賞にも挑戦。
ここまで70勝を記録し、2008年に三浦皇成騎手が記録した新人最多勝利と同ペースで勝ち星を伸ばしており91勝の記録を更新する期待をされている。
かたや風切は競馬学校時代の成績では互角も、デビュー前に大怪我をしてようやくデビュー、大物厩舎所属でもないことから本日もダントツ最下位人気の馬に騎乗していた。
「流石に俺の馬にはついて来れないだろうけど、お前ならその他の馬には負けないよな?へへへ」
祐翠が風切に笑顔で質問すると春馬が応える。
「俺はこのレース勝つつもりだぞ」
その答えに笑顔のまま何も言わずその場から去った祐翠。
永遠のライバルの2人の記念すべき初対決がいよいよ始まろうとしていたーーー
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