第11話 最悪な事態!? (後編)

 予約とは? 俺は一切聞いてない。

 旅館の女将さんの服装って、テレビとかで見た事が、あるけど実際に着物何だ。

 何故か少しホッとしている自分がいる。


「それでは、ご部屋に案内をさせて頂きます」


 女将さんはそう言って、俺達を部屋に案内した。

 部屋は少し広めな和室。

 ちょっと大きめテレビもあり、外を眺めれるベランダもある。


「それでは後でご飯持って来ます。それまでごゆっくりどうぞ」


 女将さんはいい終わると、何処かに言ってしまった。

 いまから俺は少し、真昼に尋問しないとな。

 と思った矢先に真昼から先手を食らった。


「私が何故旅館を予約したのか、聞きたい見たいだけどさ、まず音羽君。その右手どうしたの?」


 やっぱバレてましたか。

 俺の右手を知ってたからこそ、優しく包み込んできた。

 そこで合点する。

 ここで問題なのは、素直に右手の事を言うか、言わないかだ。

 無論、言わない。

 真昼に無駄な心配を、させたくないのもあるが、一番は病気の事をバレてしまう。


「……それに関しては言えない」


 何も考えず俺は言葉を出していた。

 真昼は少し考える様にし、次の刹那。

 俺を思い切り抱きしめて来た。

 やはりと言うべきか、俺の中に潜んでいるあれが出始めようとする。

 完全に発症する前に、真昼を離そうとした。

 だが、真昼は決して離れなかった。


「私音羽君の事、まだ全然理解出来てない! だけど後少しの短い時間の中で、理解したい」


 真昼は涙を流し、俺に言った。

 俺は何も言えなかった。

 真昼の後少しと言う言葉に、高揚感がでて、再び自分に苛立ちを、覚える。

 俺は真昼に理解なんかされたくない。

 そんな事を、真昼本人にはいえない。

 俺は真昼の為に、思い出作りとして、ここまで来ていた。

 なのに最終的には、俺が真昼を追い込ませてる。

 彼氏失格だな。

 と、考えた、その時、俺の頬に冷たい物が通る。


「音羽君……」


 真昼の悲しそうな声が、部屋中に広がる。

 真昼は心配そうな表情で、俺を見てきた。

 そんな表情で、俺はいま涙を流している。

 と、理解する。


「可笑しいな。何で泣いているんだろうな?」


 俺は自分自身の状態に理解が、出来ていなかった。

 脳の処理速度が追いついていない。

 旅館に来るまでの間、色んな事が起き、情報量がありすぎた。

 脳内がパンクしても仕方がない。

 真昼は何も言わず、俺を見ている。

 次の瞬間、俺の頭に少し重みが現れた。


「君は頑張り過ぎなんだよ」

「……そうかもな」


 真昼は涙を流しながら、俺に笑みを見せた。

 手は頭を撫でている。

 俺は真昼に釣られて笑みを浮かべた。

 体を任せて真昼を、そのまま抱きしめた。

 真昼は少し驚いていたが、すぐに身を任して来た。


「こんな時間が永遠に続けばいいのにね」

「そうだな」


 真昼の言葉に胸が高揚した。

 さっきの高揚とは全く違う。

 今の高揚は俺が、真昼としての彼氏を、自覚させる物。

 トントンっと、足音が聞こえた。

 俺は反射的に真昼を離した。

 トントンとノックする音が聞こえ、女将さんの声が。


「ご飯の準備が出来たので、お運びしてもいいでしょうか?」

「あ、はい。お願いします」


 女将さんの言葉に俺は返答をした。

 襖が開けられ、豪華な料理が運ばれて来る。

 旅館の事だけ合って、豪華な料理だなと、単純に考えていた。

 真昼の顔を見るまでは、運ばれ終わった後、女将さんは出て行き。

 部屋には俺と真昼。

 そして豪華な料理が並んでいた。

 真昼は軽蔑する様な目で、俺を見てくる。

 視線が痛い、まるで絶対零度の視線だ。


「ま、真昼?」

「なに?」

「あの……」


 俺は真昼に何も言えなかった。

 待って!? ちょっ怖い! ガチで怒ってる。

 ここまで冷たくされたの初めてだ。

 真昼と出会って初めての物。


「えっと、とりあえず飯食べようか?」

「うん」


 これから言葉を、選ばないといけない。

 真昼を怒らせると、怖いのは分かった。

 雪ノ宮に怒っている時も、結構怖かったけど。

 今回は別の意味で恐怖を感じる。


「音羽君、後でちゃんと話をしようね!」

「え? あ、はい」


 絶対後でめっちゃ怒られる! 体が危機を覚えてる。

 俺達は料理を食べる。

「うっま!」

 真昼の思わずの言葉に俺は、少し笑ってしまった。

 真昼は恥ずかしそうにしていた。

 そのまま俺達は黙々と、料理を食べた。

 食べ終わると、真昼が一言。


「一緒に温泉に入らない?」


 その言葉に俺の思考は一瞬停止をした。

 思考が復活すると、同時に俺の体に熱が帯びる。

 多分、いま俺は茹でタコの様に、顔が真っ赤だと思う。


「真昼冗談はよせ」


 顔を伏せながら、逃げるかの様に言った。

 真昼が冗談で言ったと思い、あんまり本気にしてなかった。

 いや? 別に変な期待何かはしていない。

 真昼は一切、言葉を発しなかった。

 伏せていた顔を上げると、真昼は真剣な顔をしている。


「一応本気だし、こう見えて結構恥ずかしいんだよ」


 俺はゴクリと生唾を飲んだ。

 真昼の頬は紅潮している。

 表情で本気という事が、分かった。


「分かった。入ろう」


 自分の体が燃え尽きる様に、熱いのが分かる。

 真昼は断るかもしれない。

 だけど俺は言う。


「温泉に一緒に入ろう」

「うん。ありがとう!」

「この旅館って温泉、何処にあるの?」


 俺は一つの疑問があり、それを真昼に聞く。

 真昼は首を傾けた。

 あれ? 俺変な事聞いたのか。

 と思った瞬間。

 真昼は……「ここさ」

 と、一つの部屋を開けた。

 部屋の中には鏡張りに温泉が合った。

 鏡からは景色が見える。


「外の景色を見ながら入れる温泉……露天風呂か」

「ご名答!」


 真昼は自慢げに言った。


「……まさか、本当に一緒に入るとはね」

「お前が誘ったんだろ?」

「それはそうだけど、本当に入ってくれるとは思わなかった」


 普段の俺だったら、絶対入る事はないだろう。

 だけど、今回は特別。

 と、自分に言い聞かせる。

 俺の症状も今しか、正常ではないかもしれない。


「じゃあそろそろ出ようか」

「そうだな」


 露天風呂の湯から出て、黒のパーカーとジーパンを着る。

 さっきのスペースに合った椅子へと座る。


「ねぇ音羽君、どう似合う?」


 真昼の声が聞こえた。

 声の方に視線を向けると、そこには浴衣を着た真昼が居る。

 浴衣が様になっていた。

 真昼は俺の近くに来て、座り込んだ。


「いつまで京都に居ろうか?」

「そうだな決めてないな」


 真昼の言葉一つ一つに胸が軋む。

 自分の体だから一番分かっている。

 もうこれ以上、真昼とは一緒に旅ができない。

 これ以上、ともにすると、しまう。

 深く考えるな。


「あ、真昼そろそろ寝たらどうだ?」

「何唐突に?」


 確かに唐突過ぎた、流れが不自然過ぎる。


「まぁいいや。布団引いて寝よう!」

「俺もかよ……分かった」


 真昼は立ち上がり、襖から布団を取り出す。

 布団をそのまま引き横になる。


「じゃあ電気消すぞ」

「うん、分かった」


 俺の言葉に真昼は反応し、目を瞑った。

 真昼は再び、すぐ寝た。

 俺は真昼が寝たのを、分かった瞬間。

 胸はドクンドクンと脈を打つ。

 心臓が跳ね上がり、目尻が熱くなる。

 次の瞬間、俺の意識も体も自由が利かなくなった。

 気づいた時、俺は……真昼の首を絞めていた。


「カ、カッハ、苦しい」

「死ねよ死ねよ真昼!」

「う、う、うんいいよ。君の為に死んで上げる」


 真昼は苦しみから起きて、俺に酷い事を言ってる。

 それなのに真昼は笑みを浮かべ、俺の頬に優しく触る。

 次の刹那、俺の意識は自由になった。

 すぐさまに首から手を離した。


「ゲホッゲホッ、はぁはぁ」

「俺は……俺は何て事を!?」

「き、気にしないで」

「ま、真昼!」


 俺は真昼を強く抱きしめた。


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