第8話 一時の休息

 自分の体に惑わされるな。

 心を無にしろ、今はひたすら真昼を楽しませる。

 根性論に近い事を思っていた時、俺の体に合った吐き気が、消滅していた。

 これは一時的に収まっているだけ。かもしれない。

 それでも、いまの俺にはありがたい事、次、また発症をする前に真昼を楽しませる。


「真昼色々と合ったな」

「え、うんそうだね」


 やっぱ少し気まずいか。

 俺もどちらかって言うと、気まずい。

 この空気を変えないとな。


「次、どこに行く?」


 俺はなるべく真昼に笑顔を、見せ手を差し出す。

 真昼は少し戸惑っていたが、笑顔で俺の手を取った。

 さっきまで気まずく、吐き気、恐怖すら合った。

 それなのにいまは、何も怖くない。


「天気晴れたね」

「そうだな」


 曇りに覆われていた天気も、晴天に戻った。

 天気がまるで、俺達の心境を表してるよう。

 グゥゥゥゥと少し前に聞いた、ような音がする。


「ごめん、お腹空いちゃった」

「そうだな。今時間は……」


 スマホを見ると、もう既に12時を回っていた。

 もう昼時だし、きっと真昼も緊張の糸が、解けてお腹が空いたと思う。


「近くに飯屋合ったかな?」

「そんなの一緒に探せばいいじゃん」


 ギュッと真昼が俺の手を、強く握った。

 真昼を見ると、眩しいくらいの笑顔。

 こいつの笑顔が、あれば色々と浄化でもされそう。

 そんなバカみたいな事を、考えながら俺と真昼は歩み始めた。

 歩いて十数分くらいで、ファミレスを見つけた。


「ファミレスが合ったね」

「ここで腹ごしらえだな」


 俺達はファミレスの中に入った。

 席に着くと、店員がメニュー表を持って来た。

 机の上にはメニュー表、箸フォーク、スプーンとある。

 箸入れの近くには店員を呼ぶボタンが合った。

 このボタンで店員を呼べばいいのか。

 メニュー表を見ると、日替わりランチみたいな物もある。


「ねぇ音羽君これ!!」


 真昼が珍しい物を、見たかのように俺に言ってくる。

 真昼が見ていたメニュー表を、見るとそこにはにしんそばが合った。

 そば? うーんまぁそばくらいファミレスでもある。

 それにしてもにしんそばか。

 京都名物がファミレスにあるとは。

 これに関しては真昼が驚く理由も分かる。


「………」

「頼んでみるか?」

「いいの?」

「別に構わねぇよ」


 机の上にあるボタンを置くと、ポーンと音が鳴り、しばらくしてから店員が来た。


「メニューがお決まりでしょうか?」

「にしんそばを二つ下さい」


 メニューを頼むと、店員は繰り返し行ってから、厨房らしき所に行った。

 名前だけ、にしんそばとかで、実物は違うとかありそうだけどな。

 そんな俺の疑問をかき消すように、にしんそばが来た。

 あれ? 速くね? まだ頼んで五分も経ってない筈だぞ。

 そばが入ってるお椀を触ると、暖かい。

 どうやらちゃんと、出来たて見たいだ。


「来たし食べてみようか」

「ああ、そうだな」


 ファミレスで本格的な、そばが出てくるとはおもわないな。

 見た目だけだと、蕎麦屋にも負けず劣らず。

 実際、見た目より味だ。


「……美味いな」

「うん! 美味しい」


 味は想定していたより、美味しく箸が進み食べ終わる。












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