第6話楽しい筈の旅行?

「何処かに消えたのかと思った」

「あ、えっと、ごめんなさい」

「ほんとうだな!」


 俺は真昼の頬を掴み、軽く揺らす。

 真昼は申し訳なさそうな顔で、俺の事を見ていた。

 今回はもうこのくらいで、許してやるか。

 いまはとりあえず思い出作りだ。

 それを専念しないと、来た意味がない。


「いまから何処に行く?」

「うーん。京都の世界遺産を見に行きたい!」

「分かった」


 京都の世界遺産と、言っても色々とあるしな。

 具体的な場所を、言ってくれないからな、近くにある寺に行くか。

 確か、ここからならば、バスで乗り換え、行ける筈。

 行く場所をある程度を決め、その場所に向かう為に歩き出す。

 ネットカフェから、歩いて数分でバス停が合った。


「まさか、こんな近くにバス停があるとね」

「ラッキーだな」

「うん、そうだね」


 俺とは真昼は軽い雑談を、しながらバスを待っていた。

 およそ、数十分経ったくらいでバスが来た。

 俺達はバスの座席に座り、目的地に着くまで待つ。

 バスの中は人が少なく、俺と真昼しか乗っていない。

 バスの窓から見る光景は、案外新鮮な物である。

 真昼が。

 どうか分からないが、俺はあまり乗った事ないから、そう感じてしまう。

 バスが発車しておよそ三十分くらいだろ。

 バスが到着した。

 金額を支払い、バスを降りる。

 バスを降りると、人が結構栄えていた。


「やっと、目的地の一つに着いたね」

「平日なのに案外、人がいる物なんだな」

「だってそりゃ、世界遺産の一つであり、有名観光スポットなのだから!」

「何でお前がドヤってるんだよ」


 俺の問いに真昼は誇らしげに語った。

 何より自分の事見たいに言っている。

 この子は何ですか? 京都の方ですか? 違いますよね。

 俺と同じ県に住んでるだろ! どんだけ京都が好きなんだよ。

 観光スポットは有名な所はあるし、歴史的の建物もある。

 俺達の地元と、比べ物にならないくらい、京都はいい所だが。

 はしゃぎ過ぎだろ!!


「おーい真昼、あんま離れるな」

「だったら音羽君も早く早く」

「たっく彼奴は子供かよ」


 真昼が楽しそうなのが一番だな。

 京都に来て良かった。

 真昼は自由奔放に行動している。

 そのせいで俺と結構距離が空いた。


「迷子になられたら困るんだよな」


 俺は少し苦笑しながら真昼を探す。

 周りを見渡しても人込みのせいか。

 真昼を見つけれない。

 どうするか、考えていた時、スマホに着信音が鳴った。

 ポケットからスマホを取り出し、見ると雪ノ宮からメッセージが来ていた。


「ゲッ!! 彼奴からメッセージかよ。なんか裏がありそうで怖い……!?」


 真昼どこにいるんだ?! 雪ノ宮の話が本当ならば、真昼が危ない。


『黒羽、君に言っときたい事がある。問題児達が真昼を狙っている』

『雪ノ宮、情報サンキュー』


 あのくそ共、一体何故真昼を狙う? 意図は読めない。

 いまの状況的に真昼が、危険な状態。


「くそ! 人が多過ぎて真昼を探せない」


 片手にスマホを持ち、真昼を探している。

 人混みのせいで、真昼の居場所を把握が出来ない。


「全然電話にも出ない」


 真昼に電話を掛け、人混みを割って探す。

 二十コールが経っても真昼は出ない。

 何かが可笑しい、大体いつもだったら、最低でも十コール以内に出る。


「最悪の場合を考えろ!」


 最悪の場合を考えた、その瞬間。

 俺の胸は高揚を覚える。

 ふざけるな! 真昼にもしもの事が、合ったかもしれない。

 それなのに喜んでいるんじゃあねぇ! 自分に怒りが隠せない。


「ねぇあの人の目……」

「え? あれカラコンでしょ」


 若い二人組の声が俺の耳に届く。

 声質から女性の声。

 俺は声が聞こえる方に向く。

 すると、女達は珍しそうに見てきた。

 赤いカーディガンにミニスカを、履いた女と、セーラー服を着た女。

 見るからに高校生くらいの年代。

 ……つうか、何だこいつら? 俺は見せ物じゃない。


「やば、こっちに気づいた」

「本当だ。だったら聞いてみよう」

「え、やめときな」


 女達は何かを言っている。

 会話までは聞こえない。

 きっと、何か失礼な事でも言ってるだろう。

 こいつらに構っている暇はない。

 俺は女達を後にし、歩みを進めた。

 その時、一人の女の声が聞こえた。


「そのってカラコンですか?」


 女の言葉に俺は足を止めてしまった。

「赤い目?」


「はい! その綺麗な赤い目はカラコンですか?」


 考えていた事が、言葉に出てしまっていた。

 いま真昼が、危険な状態の可能性がある。

 それなのに歩みを止め。

 いま現在、自分の状態の情報を、知ろうとしていた。


「カラコンではない」

「え? じゃあ裸眼?」

「そうなる。俺はここで」

「あちょっと……行っちゃった」


 女の静止する声が聞こえた。

 赤い目の状態で真昼と、会う訳には行かない。

 真昼を探す内に目は、きっと落ち着いてる。

 とりあえず、いまは真昼を探す。

 そんな時スマホに電話が繋がった。

 俺は真昼に声を掛けようとした刹那。


「やめて下さい」

「うるせぇ、いいから行くぞ」


 電話の先から真昼と、男の声が聞こえる。

 電話の状況的に真昼を、男が無理やり連れて行こうとしている。

 そこまでは分かる。

 だが、それ以外の具代的な場所がない。

 何か、一つでも情報が欲しい。

 と、思っていた、その時、滝のように水が流れる音がした。


「あそこか」


 真昼の居場所は分かって来た。

 流れる水音、雑音にも近い人の声。

 ここの寺で、そんな場所は一つしかない。


「願掛け」


 さっきより急ぎめに歩みを進める。

 ま昼の安否は確認できた。

 それでも真昼が、危険なのは変わりない。

 静まれ、胸の高揚、真昼が危険と、分かって喜ぶな! ドンっと音が響く。

 高揚を静ませる為、自分の胸を叩いた。

 叩いた事により高揚はなくなった。

 その代わり、鼓動が速くなる。

 体を動かせ、血液を循環し脳に回せ。

 最短ルートを探し出せ! 俺は一瞬、歩みを止めた。


「真昼待っていろ」


 俺は再びを歩みを進める。

 自分で見つけ出した、最短ルートを使い。

 真昼の元へ向かう。

 願掛けがある寺に着くと、二人の男女が揉めていた。

 最近、同じ光景を見かけたばかりだ。

 今回は都合がいい事に前と、違いそこまで人がいない。

 地面を踏ん張り、片足で地を蹴る。

 地面は土ではなく木製の床。

 少しキシッと音が響く。

 俺は走り、二人の前に現れる。

 男の外見はヤンキーそのもの、動き易いジャージを着てる。

 男は驚いた顔をしていた。

 その反対に真昼は安心の表情をしている。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る