雨の日のかくれんぼ

「見ーつけた!」

ここは学校の校庭。杉村カナは休み時間にみんなでかくれんぼをするのにハマっている。もう小学6年生だが、かくれんぼもやってみるとなかなかおもしろい。

「ねえ…。あの子だれ…?」

一緒にかくれんぼをしていた親友のユキが言った。目線をそっちに向けてみると、見なれない女の子がいた。その女の子は背たけから見ると4〜5年生くらいで、白いノースリーブのワンピースを着ているを顔は長いボサボサのかみの毛でかくれていてよく見えないが、前がみのすきまから見える大きな目はこっちを見ているように見える。

「ちょっと気味悪いし、それにうちらのクラスじゃないし、別に気にしなくていいと思う。」

親友のリンカが言った。

「キーンコーンカーンコーン」

授業開始のチャイムが鳴り、カナたちは急いで教室にもどった。

そして次の日、また校庭にあの少女がいた。

「何か、カナの方見てる気がする…。」

ユキが言った。

「でもー、今日もいるってことは、やっぱり、この小学校に通っている普通の女の子なんじゃない?」

リンカが言った。

(本当にそうなのかな…そうだったらいいけど…。)

カナは少し怖くなった。


それからずっとあの少女はいたが、1週間もたてば、もうカナも、みんなも気にしなくなっていた。

ある日のこと。

「さようなら。」帰りのあいさつをし、いつも通り親友のユキとリンカと帰ろうとした。でもユキは歯医者に行く予定があり、リンカも、帰りにおばあちゃんちに行く予定があったので、カナは1人で帰ることになった。少し暗い気持ちで通学時間を歩いていると、雨がふってきた。

「今日は傘持ってきてないよ…。しかも新しいくつなのに、どろがはねてよごれちゃう。ユキもリンカも一緒に帰れないし…。今日はツイてないな…。」そうひとりごとをつぶやいていると、カナは気配を感じた。


後ろを向くと、100mくらい先に、あの少女が立っていた。傘もささずに、ランドセルもせおわずに、カナのことをずっと見ている。(ランドセルもせおってないき…。何かおかしい!!)カナは走り出した。

すると。あの少女も走り出し、カナを追いかけた。雨で体はぬれ、新しいくつもどろがはねてよごれてしまう。でも今はそんなこと考えていられない。

カナは、手足を必死に動かすが、なかなか前に進まない。それどころか、カナとあの少女とのきょりは70m、50mとちぢまってきている。足がつかれてスピードが、がくんと落ちた。もう少しでつかまってしまう…!!


(そろそろ家につく!)

目線の先にカナの家はあった。カナは最後の力をふりしぼって全力で走った。そして家のドアを開けて中に入り、急いでカギをしめた。「助かった…」

げんかんにぺたりとすわりこんだ。

今も恐怖で体全体がふるえている。

カナは自分の部屋に入り、まどから外を見たが、雨の中にあの少女はいなかった。あの少女が何だったのか、それは今も分からない。それよりも助かったことがうれしかった。次の朝ベッドから起き上がり、目をあけるとカナの体が固まった。そこにはあの少女がいた。「あ…あ…」声を出そうとしても声が出ない。そして少女の口がぱかりと開いた。「見いつけたぁ」

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