第62話 メック 男陣営の取り決め

「ご一緒にポテトはいかがですか?」


「は、はい。じゃあセットでお願いします♡」


「ありがとうございますっ!✧✧」


俺がイケメンスマイルを振り撒くと女性客は、目を♡にしながら、注文をランチセットに切り替えてくれた。


トレーナーの浅井さんはその成果に興奮気味に話しかけて来た。


「里見くん、凄いじゃない!声かけしてセットにしてくれたお客様、これで5人目よ?やっぱりイケメンくんが言うと宣伝力抜群ね!」


「はい。流石、浩史郎先輩ジゴロ接客すごいです。むぅ〜、先輩として負けられません!」

「ジゴロ接客言うな。それに先輩って言っても、数日の違いだろ?」


闘志を燃やしてくる隣のレジのりんごに、呆れてそう言った俺だが…。


ギリリッ!


「?!」


殺気を感じて、振り向くと、以前りんごに執拗に話しかけていた老木おいきという男性店員が、ポテトを盛りつけながら、こちらを燃えるような目で睨みつけ、歯ぎしりをしていた。


なんだ、あいつ、不穏だな…。


男子の嫉妬を受けるのは今に始まった事ではないが、りんごを巡っては立ち位置をハッキリさせて置かなければならないな。


対決もやむ無しと俺は心の内に覚悟を決めたのだった。


そして、その機会は、バイトが終わってすぐに訪れた。


「おい。里見くんとか言ったか?

ちょっとぐらいイケメンで身長高いからって、調子に乗らない方がいいぞ?

森野ちゃんだけに飽きたらず、メックでハーレムでも作るつもりかよ?」


「はあ?老木さんって言いましたっけ?俺は別にそんなつもりありませんけど…!」


更衣室で一緒になった老木に言いがかりをつけられ、俺も喧嘩腰に返した。


「そっちこそ、嫌がる女子に無理矢理言い寄るの、止めた方がいいですよ?

りんごを困らせる事があれば、俺が相手になりますからね。」


「な、なんだと?こ、後輩で、高校生のくせに生意気…なっ。こ、こっちを見下ろすんじゃないっ…。」


体格で優る俺が、威圧的に睨むと、老木は怯み、目を逸らした。


何だよ。いきってる割に案外弱いな。


「ふんっ。ま、まぁ、高校生相手に本気になるのも大人げないし、これぐらいにしといてやろう。

君が狙ってるのは、森野ちゃんだけ。他の女子は俺のテリトリー。そゆ事でOK?」


「は、はぁ…。まぁ、りんご以外にアプローチするのは勝手にすればいいと思いますけど…。」


明らかに威圧負けしているのに、そんな事を提案してくる老木に、俺は呆れ気味だった。


他の女子、勝手に老木のハーレムみたいに言われてるけど、りんごの話によると、女子達に撃退マニュアルが製作されるほど嫌がられていたよな…。

アプローチしたところで、捕獲できる女子はいないような気がするが…。


まぁ、俺はりんごにさえちょっかい出さなければいいかと、老木のよく分からない取り決めに同意したのだった。


「うん!里見くん、物分かりが良くって意外といい奴だなぁ!よぉし!次に入って来た女子バイトの子には頑張ってアプローチするぞぉ!」


「は、はぁ…。頑張って下さい。」


盛り上がっている老木に苦笑いを向け、俺はそそくさとその場を後にした。


        ✽


「あっ。浩史郎先輩。お疲れ様です!遅かったですね。」


同じ時間にバイトが終わったりんごが、出入り口で待ってくれていた。


「いや、なんか、老木って人によく分からない絡まれ方をしてな…。」

「ああ。ぷぷっ。老木さん、面白いですよね。」

「面白いっていうレベルなのか、あれ…。」


げんなりしている俺にりんごはニヨニヨした笑いを浮かべた。


「何にせよ、浩史郎先輩、友達少ないから、女好きという共通点のある先輩と仲良くできてよかったじゃないですか。」


「一緒にすんなよ!」


「バイトだけでなくて、生徒会の仕事を手伝ったり、テニス部に入ったり…。最近は浩史郎先輩の活躍の場が、どんどん広がって行きますね…。」


子供の成長を見守る親のような表情のりんごに、俺は指摘した。


「君もそうだろ。これからバイトのシフトを結構入れるみたいだけど、部活もあるのに、大丈夫か?」


「ああ。副部長が、夏休みは夏合宿だけ来てくれればいいって言って下さっていたから、全っ然問題ないですよ。」


そう言ってりんごは親指を立てたのだが…。


その日の夕方、テニス部部長、松平部長から携帯にメールを送られて来て、

新入部員含め、夏休みの朝練に必ず参加するようにと伝えられたのだった。



*あとがき*


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