第44話 ラウンド8デート
「どうした、りんご?忘れ物か?」
先に玄関から出た俺が呼びかけると、
りんごは、周りをキョロキョロしながら家を出るのを躊躇って、ドアにへばりつきながら聞いてきた。
「浩史郎先輩、本当に一緒に外出してもいいんですね?」
「ああ。ホラ!何かあった時の為に、「俺達に軟式テニス部の臨時部員を打診中」と生徒会長に一筆書いてもらっている。
もし、見つかったとしても、練習の為と風紀委員に言い訳は立つだろ。」
「そう…ですよね?なかなか一緒に外へ出る機会がないので、慣れなくて。」
生徒会長=石狩先輩直筆の書類を見せると、りんごはようやく安心したように、ドアから離れ、外に降り立った。
「へへっ。じゃあ、行きましょうか?ラウンド8!//」
「あ、ああ…。//」
普段は一緒に住んでいる事が周りにバレないように、登下校も時間をずらし、風紀委員に仲を疑われないようデートの時も待ち合わせにしている。
そう言えば、二人で一緒に家を出る機会はあまりなかったかもしれないな。
隣を歩くりんごが、少し気恥ずかしそうな表情をしているのを新鮮に感じた。
生徒会長の石狩先輩から、俺、宇多川、りんごに、テニス部の臨時部員になって欲しいと突然頼まれ、休み明けにその返事をする事になっていた。
俺は硬球テニスの経験しかした事がなく、りんごは数ヶ月しか経験がない為、取り敢えず
どんなものか試してみるかと(いう名目のもと)、休日、数駅先の『ラウンド8』というスポーツ施設に(デートしに)行く事になったのだった。
駅までの道を並んで歩きながら、気になる事をりんごに聞いてみた。
「そう言えば、宇多川は家の人に部活許可さしてもらえそうなのか?」
「ああ。夢ちゃんは、数ヶ月限定という事なら、なんとかお祖父様に許してもらえそうと言ってましたよ?
夢ちゃん、運動神経抜群で、どんなスポーツでもすぐにマスターしちゃうから、すごいんですよ?流石の浩史郎先輩でも夢ちゃんに勝つのは難しいんじゃないかな?」
「ムッ。それはねーだろ。俺だって、中2の途中まではガチでテニスやってたんだぜ?」
思わず、むきになって言ってしまうとりんごは生意気な笑みを浮かべた。
「でも、硬式でしょ?軟式なら私の方が先輩な位だし…。ハッ。今の状態なら私、浩史郎先輩に勝ってしまうかも…?手加減した方がいいですか?」
衝撃の事実に気付いた風に口に手を当てて、そんな事を言ってくるりんごに冷めた目で言ってやった。
「や、それは本当にないわ。」
「むうっ!何ですか、その全く相手にしてない感じ、ムカつく!」
りんごは足を踏み鳴らして悔しがり、俺に指を突き付けて宣言して来た。
「よぉし!こうなったら勝負をしましょう!
負けた方が、今晩の食事をどっちが作るのはどうですか?」
「え、別にいいけど…。」
普段から食事はりんごが作ってくれてるし、自分が負けてもこいつ、ノーダメじゃねーか?
得意げな顔で随分姑息な賭けを吹っかけてきたなとは思ったが、
まぁ、恐らくかなり実力差はあるだろうし、万が一負けても食事を作る位なら嫌な事でもないからいいかと了承してしまったのだが…。
✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽
「硬式とは違って、かなりラケットもボールも軽いな…。あと、コートの広さとネットの高さ、下の質感、全然違うな…。まぁ、(テニスの練習は半分りんごとデートをするための口実だし)今日は遊びみたいなでいっか。」
ラウンド8に着き、レンタルしたウェアと靴を身に付け、先にコートに入り、ラケットでボールをつきながら、
りんごの着替えを待っていると…。
「はあっ。お待たせしてすいません。ちょっとお母さんから電話がかかってきちゃって。」
「…!!//」
息を切らしてコートに入って来たりんごは、半袖ポロシャツに、ミニスカートという涼しげな格好で、思わず俺は目を見開いた。
「さっ。勝負です。浩史郎先輩。ふふん。負けませんよ?」
「り、りんごののくせに生意気な…!」
不敵な笑みを浮かべるりんごの白く眩しい太ももをガン見しながら、俺は唸るように言ったのだった。
*あとがき*
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