第38話 りんごフラッペに泣く

その後、迷惑をかけたお詫び(?)にちょっとした物を買い物がてら、すぐに会計を済ませて、猫カフェを出た俺は、すぐに隣のビルのカフェに向かった。


「あっれ〜?浩史郎先輩達どこ行ったんだろ…??」


窓から隣のビルをオペラグラスで観察するその挙動不審な客は首を傾げると、俺には全く気付かないまま、一心不乱にメールを打ち始めた。


俺は店の人に、小声で連れがいる事を伝え、左奥の奴の席に向かうと…。




ピロン。

俺の携帯のメールの着信音が鳴った。


『浩史郎先輩?そちらの様子はどうですか?順調であれば、私はこのまま家に帰りますし、二人を結び付ける為にドラマチックなエピソードが必要であれば、ワガママな彼女役として再び登場して、程よく嫌味を言い撃退

されますが、どうしましょう?』


トン!


「どうもこうもねーよ。このポンコツ猫が!」


「ふぎゃっ?! 」


俺が、りんごの席の机を軽く叩いて悪態をつくと、奴は仰天して飛び退いた。


「???こ、浩史郎先輩!? あれ?猫カフェでお姉さんといい感じになっていたのでは?帰って来ちゃってよかったんですかっ?」


目をシパシパさせるりんごに、俺は詰め寄り、おなじみのセリフを言ってやった。


「君はバカなのか?いきなり雑な計画立てて、勝手に店を出るなよ!」


「いや、でも、浩史郎先輩とあの店員さんいい雰囲気だったから、この千載一遇の機会を逃してはいけないと思って…!」


アワアワしながら、そう言うりんごに、俺はフーッとため息をついた。


「あのな…、あの店員さん、彼氏いるってよ?」

「えっ!||||」


りんごは俺の言葉にざっと青褪めた。


「お待たせしましたぁ!ご注文の特製りんごフラッペになります。」

「「…!」」 


そこへ店員が明るい声が響かせ、 ガラスの器に入ったかき氷をテーブルに置いて行った。


「なんて奴だ…。俺の失恋を肴にかき氷食べるつもりだったのか?|||| 」


「いや、あの、お店のオススメだって 言われて、断りきれなくて、その…。」


りんごは、困り切って大量の汗をかいていた。いた。



「よし。そんなにかき氷が食べたいなら、俺が食べさせてやる。もっとそっち寄れよ?ホレ、あ〜ん!」


「ひゃっ。浩史郎先輩っ…?わっ。はぐっ!シャクシャク…。」


俺はりんごを席の奥に追いやると、隣に座り、かき氷をスプーンで掬い、一口食べさせてやった。


「あ、あう…。//あの、自分で、食べれ…。」

「あーあ。理想の女性に会ったと思ったら、即失恋とはな…。しばらくこの胸の傷は癒えないだろうな…。」

「…!!||||」


恥ずかしそうになりんごの発言を遮るように、悲壮な顔でわざとらしく言ってやると、りんごは涙目になった。


「こ、浩史郎先輩っ…。ううっ…。ごめんなさっ…。」


「あ。特製りんごフラッペ美味しいか?もっと食べろよ。ホラ。」


「あううっ!はむっ!シャクシャク…。うわ〜ん!しょっぱいです〜!胸が痛くてキンキンします〜!!」


泣きながらそう言うりんごに、俺は呆れて言った。


「胸はキンキン痛まないだろ。アイスクリーム頭痛起こしてんじゃないか?」


         *

         *


その後、かき氷を完食後、りんごは今回の失態について深く反省したらしく、うるうると目を潤ませて申し出て来た。


「浩史郎先輩…。私、今度の事はどう謝っていいか…。

何でもするから、許してえぇっ…。」

    

「ほーう?何でもすると言ったな…?」

「??||||」


俺がニヤリと悪どい笑みを浮かべてりんごを見やると、奴は子猫のようにぷるぷると震えていた。



*あとがき*


いつも読んで頂き、フォローや、応援、評価下さって本当にありがとうございます

m(_ _)m


今後ともどうかよろしくお願いします。


































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