第26話 М先輩の糾弾
理事長でもある、浩史郎先輩のお母さんが助け舟を出してくれて、何とか無罪放免になったものの、風紀委員長=西園寺先輩以外の風紀委員女子達は、その決断に納得出来ている訳ではなさそうだった。
特に真由美先輩は、西園寺先輩に詰め寄り、強い不満を訴えた。
「委員長。森野さんを無罪放免だなんて、納得出来ません!理事長にうまく丸め込まれちゃってません?」
「そ、そんな事はありませんけれど、里見様は森野さんを嫌っているわけだし、森野さんは宇多川さんと百合ってるのだったら、私達の心配は杞憂という事になりますでしょ?」
「騙されちゃいけません!里見くんと、その女の仲睦まじい様子は、友達とか家政婦とさの域をはるかに越えていました。私は実際にその現場を見てそう確信しているんですよ?
その女を懲らしめてやるって約束してくれじゃないですかっ!」
「べ、別にこのままにして置くとは言ってません。
ただ、事実をより詳細に把握するためには、
視察してからでも遅くないと思っただけで!」
「それって、会長だけが、視察にかこつけて、里見くんと泊まり込みでアプローチを図るって事ですよね?
ずるいですよ!!私なんか、ラブレターを渡そうとしただけで、こんな前髪にされて、森野さんなんか里見くんとしばらく生活していたのに、なんの罰もなく、許されるなんて!!」
「ま、真由美さん。落ち着きなさい。」
「でも、真由美さんの言うことも尤もです。」
「あきらかに有罪な森野さんに罰を与えないなんて不公平です。」
「桜井、友田!あなた方までっ?!」
「だいたい、会長だけが視察もとい、里見くんとイチャイチャするなんて、ズルいです。視察に行く人は公平にくじで決めては?」
「それ、賛成です。」
「な、何を言っているの?視察には、それに相応しい人物が行くべきでしょ?風紀委員長たる私が行かずして、誰が行くんですか?理事長は私に一任すると言っていたでしょう!」
風紀委員の方々(幹部も含めて)の噴出する不満を受けて、西園寺先輩は焦って叱りつけていた。
「りんご。」
夢ちゃんがこそっと話しかけてきた。
「風紀委員も、この分だと内輪もめでバラバラになりそうね。西園寺先輩の力を削ぐことができて好都合だわ。」
「もしかして、そのために理事長は視察の話を出してきたの?」
「まぁ、一番の目的としては、西園寺先輩のりんごに向けていた矛先を何かに変えらればと思って、里見先輩をエサに視察の話を考えたのだけど、案の定食い付いたわね。その上風紀委員会が弱体化してくれるなら、一石二鳥だわ。」
「ほぇ~!夢ちゃん賢こ…!」
私はさすがの夢ちゃんに感嘆の声を上げた。
「さっ、これ以上ここにいてもしょうがないわ。また私達に矛先が向かう前にずらかるわよ。取り敢えず、生徒会室に戻りましょう。」
夢ちゃんに促され戸口の方に移動する。
「うっ、うん…。」
そうだ。生徒会室で、浩史郎先輩と、東先輩が待ってる。二人には心配かけてしまったし、早く安心させてあげなきゃいけない。
でも…。
チラッと後ろを振り返ると、真由美先輩をはじめ、やる方ないといった風紀委員の方々の様子を見て、胸が痛んだ。
中には悔し涙を流している人もいる。
この人達本当に浩史郎先輩の事が、好きなんだよな。
恋人でもない私が浩史郎先輩の側にいる事でこの人達を傷つけてしまったのは、紛れもない事実。
私はわんわん泣いている真由美先輩を見遣ると…。
「ごめん、夢ちゃん、ちょっと待ってて!!」
「りんご⁉」
私は、先程西園寺先輩がいた、議長席に駆け寄り、置いてあった髪切りバサミを手にした。
「も、森野林檎、何をしているの!?」
西園寺先輩はそんな私に気付き、青ざめた。
風紀委員の女子達もこちらを見て慄いている。
「風紀委員の皆さん、潔白の身とはいえ、皆さんに誤解を与え、お騒がせしました事をお詫びします。
よく見ていて下さいね。」
私は髪切りばさみで前髪をジャキッと真一文字にカットした。
「りんご!!」
夢ちゃんが叫んだ。
「これで、真由美先輩と同じ罰を受けた事になりますよね?」
鏡見てないからえらいことになってるだろうな…と思いつつ…、
私は前髪が不揃いの上、一箇所斜めに真一文字になった状態でニコッと微笑んで見せた。
*あとがき*
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